理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-14
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ポスター発表
脳卒中片麻痺患者における階段昇降自立に影響を与える因子の検討
歩行自立の因子と比較して
安田 真理木元 裕介皆方 伸
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抄録
【はじめに、目的】当センターの回復期病棟では、担当患者の歩行や階段昇降の自立を理学療法士が病棟に提案し決定をしている。歩行自立の決定に関しては、下肢伸展筋力やバランス能力テスト等の数値を判断基準として用いることに加え、理学療法士の臨床経験や他職種とのカンファレンスで決定をしている。しかし、階段昇降自立の判断基準に関しては特別設けられていないのが現状であり、その判断に難渋する症例は少なくない。また、歩行自立の判断基準に関する先行研究は多数みられるが、階段昇降自立の判断基準に関する先行研究は少ない。そこで、本研究では脳卒中片麻痺患者の階段昇降と歩行の自立に影響を与える因子を抽出し、またそれぞれの因子との間に違いがあるか比較・検討することを目的とした。【方法】対象は、当センターに入院し平成23年6月から平成24年5月末日までに退院した回復期リハビリテーション病棟の脳卒中片麻痺患者とした。除外条件としては、両側性運動麻痺がある者、評価項目に欠損値がある者とした。そのうち該当者は、101名(男性66名、女性35名、平均年齢66.4±13.4歳)であった。疾患の内訳は、脳出血36例、脳梗塞58例、くも膜下出血7例であり、発症から退院までの平均日数は101.0±49.8日であった。方法は、回復期リハビリテーション病棟データベースに登録された患者データより後方視的に調査した。階段昇降及び歩行の自立度は、Functional Independence Measure(以下、FIM)によって自立・非自立に分類した。従属変数をそれぞれ階段昇降及び歩行の自立度とし、独立変数を、性別、年齢、麻痺側、介入期間、感覚障害の有無、下肢・体幹運動年齢(以下、MOA)、麻痺側下肢伸展筋力、非麻痺側下肢伸展筋力、下肢Brunnstrom recovery stage(以下、下肢BRS)、半側空間無視の有無、認知症の有無、失語症の有無、失行症の有無の13項目とした。下肢伸展筋力の測定には、Strength Ergo240(三菱電機エンジニアリング株式会社製)を使用し、等速性運動モード、40r/minでの最大ピークトルク値を計測し、体重で除すことによって算出したピークトルク体重比(Nm/kg)を採用した。各独立変数においては相関行列を実施し、多重共線性の問題が無いことを確認した後、ロジスティック回帰分析を適応させ比較・検討をした。尚、5%未満を統計学的有意水準とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。対象者には入院中の検査結果の研究使用を許可する承諾書で確認できた者に限定した。【結果】性別、年齢、麻痺側、介入期間、感覚障害の有無、MOA、麻痺側下肢伸展筋力、非麻痺側下肢伸展筋力、下肢BRS、半側空間無視の有無、認知症の有無、失語症の有無、失行症の有無はすべて有意な相関関係とならず、多重共線性の問題がないことが確認された。これらの13項目を独立変数とし、階段昇降及び歩行の自立度をそれぞれ従属変数としたロジスティック回帰分析を適応させた結果、階段昇降自立に影響を与える因子としては、麻痺側下肢伸展筋力が選択され(オッズ比20.4、p<0.05)、寄与率は0.41であった。また、歩行自立に影響を与える因子としては、MOAが選択され(オッズ比1.14、p<0.01)、寄与率は0.47であった。【考察】階段昇降自立においては麻痺側下肢伸展筋力が、歩行自立においてはMOAが抽出された。このことより、階段昇降と歩行の自立に影響を与える因子はそれぞれで異なっていることが判明した。歩行自立にバランス能力が抽出された先行研究は多数存在しており、本研究の結果もこれまでの先行研究を支持する結果となった。しかし、階段昇降自立にはMOAのようなバランス能力以上に、麻痺側下肢伸展筋力に代表される麻痺側下肢機能が必要とされることが判明した。この理由として、階段昇降は重心の上下移動が大きい運動様式であり、歩行よりも麻痺側下肢機能が必要とされるためと考えられた。そして、階段昇降と歩行の自立の可否を評価する際は、それぞれ影響を与える因子が異なるため、評価の着眼点を変えることが重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究により階段昇降自立には麻痺側下肢伸展筋力の重要性が示された。階段昇降と歩行の自立に影響を与える因子はそれぞれで異なっていることから、階段昇降自立を目標とした場合、歩行に必要なバランス能力に加え、麻痺側下肢伸展筋力への着眼が必要であることが示唆された。今後は、階段昇降自立に必要な麻痺側下肢伸展筋力の判断基準の確立を目指し、階段昇降自立に必要な麻痺側下肢伸展筋力のカットオフ値の検討が必要であると考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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