理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-15
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ポスター発表
脳卒中片麻痺患者における立位での荷重量制御課題が歩行能力に及ぼす影響
-シングルケーススタディによる検証-
田中 俊市村 幸盛大植 賢治河野 正志今西 麻帆富永 孝紀
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抄録
【目的】脳卒中片麻痺患者の歩行能力の改善には、麻痺側への重心移動能力の改善が必要であり、歩行の安定化には前後左右への重心移動域の拡大が必要であると報告されている(望月1998)。また、荷重量制御課題が、立位バランス能力に向上を認めたと重心動揺検査を用いた結果から報告されている(敷地ら2000)。しかし、荷重量制御課題と歩行能力との関係性はまだ不明瞭である。本研究では、高次脳機能障害を認めず、静止立位までは安定して保持可能であったが、動的立位や歩行にて監視~軽介助を要した症例において、荷重量制御課題が歩行能力に及ぼす影響を、シングルケースデザイン法を用いて検証した。【方法】症例は左内包後脚~レンズ核領域の梗塞により右片麻痺を呈した70歳代の女性で、発症2カ月半後の下肢Br.stageはIII、感覚は表在・深部共に軽度鈍麻であった。高次脳機能検査として、Mini-Mental State Examination、Trail Making Test:ABはともに平均以上であり、その他失語症等の検査においても問題を認めなかった。静止立位保持は自立、動的立位保持・歩行はふらつきを認めたため監視~軽介助を要した。10m歩行を、快適歩行速度にて実施し、ストライド長(cm)57.1、歩行率(step/min)21.7、歩行速度(m/min)6.3であった。介入手続きはABABデザイン法を用いたシングルケーススタディとした。症例が任意に荷重移動を行い、目標荷重量とした値にてセラピストが静止を促し、その荷重量を教示する課題をA(基礎水準測定期:反復課題)とした。一方、初めにセラピストが目標荷重量を提示し、症例がその目標荷重量へと荷重移動を行う課題をB(操作導入期:制御課題)とした。課題Bにおいて誤差がみられた際は、誤差を教示し目標荷重量まで誘導した。課題は、(1)開脚立位で右下肢に荷重させ、目標荷重量を左右均等体重、均等体重±3kg、±6kgの5種類とする課題と、(2)麻痺側前方ステップ位にて麻痺側前足部に荷重させ、目標荷重量を前足部5kg、8kg、11kg、14kgの4種類とする課題とし、(1)(2)の順に実施した。課題実施前に一度セラピストの誘導にて全荷重量を経験させた。実施回数は、1課題10回×3セットとし、目標荷重量はランダムに提示した。実施期間は、課題A、課題Bを各6日間の計24日間とした。【説明と同意】本研究は、村田病院臨床研究倫理審査委員会の公認を得て、十分な説明を実施し、書面にて症例に同意を得て行った。【結果】課題Aによる介入をA1、A2、課題Bによる介入をB1、B2とし、介入前、A1後、B1後、A2後、B2後の順で以下に示す。ストライド長(cm)は57.1、54.8、59.7、58.8、62.5であった。歩行率(step/min)は21.7、29.9、35.6、28.6、34.4であった。歩行速度(m/min)は6.3、8.3、10.6、8.3、10.7であった。課題A後より課題B後に向上を認めた。【考察】課題A後より課題B後において、ストライド長の減少を招くことなく歩行率、歩行速度に向上を認めた。円滑な運動を行うためには、フィードバック制御だけでなく、運動の結果や運動に必要な筋出力を予測する迅速なフィードフォワード制御が必要であると報告されている(道免2000)。課題Aは、課題遂行時にどの程度まで体重を移動させるかという症例自らの予測立てを必要としない反復運動である。一方、課題Bでは症例の予測とセラピストからの誤差の教示、正答荷重量の経験により予測と結果との比較照合を要したことで、より適切なフィードフォワード制御が可能となり、フィードバック誤差学習による早い適切な運動制御が可能になったと考えられた。その結果、麻痺側立脚期における前方への円滑な荷重移動の制御が可能となり、ストライド長の低下を招くことなく歩行率、歩行速度に向上を認めたのではないかと考えられた。よって、予測を立て、予測と結果との比較照合を求める荷重量制御課題が歩行能力の改善に影響を及ぼす可能性があると考えられた。【理学療法学研究としての意義】本症例のように静止立位までは保持可能であるが、動的立位や歩行に安定性の低下を認める脳卒中片麻痺患者において、予測と結果との比較照合を用いた荷重量制御課題が、円滑な重心移動能力の向上に伴う歩行能力の改善に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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