理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-05
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ポスター発表
高頻度反復性経頭蓋磁気刺激における刺激頻度の違いがcarry-over effectに与える影響
渡邉 基起松永 俊樹奥寺 良弥佐藤 峰善畠山 和利千田 聡明島田 洋一
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抄録
【はじめに】反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)は,非侵襲的に大脳皮質を刺激できる.一般に,5Hz以上の高頻度rTMSは脳の興奮性を促通し,1Hz以下の低頻度rTMSは脳の興奮性を抑制すると考えられている.これまで, rTMSと運動療法による併用効果は,多くの疾患で報告されている.併用療法では, rTMSによる刺激効果の持続(carry-over effect)が運動療法中に継続している必要がある.しかし,rTMSのみによるcarry-over effectの報告がないため,併用療法または単独の効果によるものかを判別することは難しい.先行研究では,低頻度rTMSと比べて高頻度rTMSの方が,脳卒中片麻痺に対してより高い効果があると報告されている.我々の研究でも,健常者に対して同様の結果が得られた.従来,刺激頻度の決定は検者の経験則に委ねられているが,どの刺激頻度でもcarry-over effectが誘起できるかは不明である.より高頻度でcarry-over effectが誘起できれば,刺激時間が短縮し,対象者への負担を少なく,効率の良い治療が可能となる.本研究の目的は,高頻度rTMSの刺激頻度を変化させてもcarry-over effectを誘起させることができるかを検討することである.【方法】対象は右利きの健常男性30名(平均年齢25歳,平均身長163cm,平均体重63.1kg)であり,5HzのrTMS群(5Hz群)10名と20HzのrTMS群(20Hz群),Sham刺激群10名に分けた.rTMSには,MAG PRO R100(MagVenture社製)を用い,背臥位で頭部を固定し,右1次運動野に刺激した.rTMSの設定は,安全性のガイドラインであるWassermannの報告に則り,5Hz群は90%rMTにて10秒刺激と50秒休憩を繰り返して計600発刺激した.また,20Hz群は90%rMTにて2秒刺激と30秒休憩を繰り返して計600発刺激した.Sham刺激は,5Hz群と同様の実施時間で,同様の刺激音を流した.測定側は全て左手とし,ペグボード遂行時間(ペグボード)と10秒間の数取器によるカウント回数(カウント回数)を記録した.運動学習効果を除外するため,事前練習をした.実施手順は, 1)rTMS前の測定,2)医師によるrTMSの実施,3)rTMS直後の測定,4)carry-over effectを評価するためのrTMSから20分後の測定とした.統計学的解析にはTukey法を用いて,有意水準は危険率5%とした.【倫理的配慮,説明と同意】実施について,世界医師会によるヘルシンキ宣言の趣旨に沿った医の倫理的配慮の下,当大学倫理委員会の承認を得た.対象者へ実施前に説明し,趣旨を理解した上で書面にて同意を得た.【結果】5Hz刺激群では,ペグボードは刺激前25.6±2.0(Mean±SD)秒,刺激直後22.0±2.0秒,刺激後20分22.1±1.9秒であった.カウント回数は,刺激前57±3(Mean±SD)回,刺激直後63±2回,刺激後20分64±2回であった.ペグボードとカウント回数では,刺激直後と刺激後20分は刺激前より有意に動作が速くなっていた(p<0.05).20Hz刺激群では,ペグボードは刺激前26.3±1.5秒,刺激直後21.8±2.2秒,刺激後20分21.9±2.1秒であった.カウント回数は,刺激前56±3回,刺激直後63±2回,刺激後20分64±2回であった.ペグボードとカウント回数では,刺激直後と刺激後20分は刺激前より有意に動作が速くなっていた(p<0.01). Sham刺激群では,いずれの評価においても刺激前,刺激後,刺激後20分に有意差は認められなかった.【考察】本研究では5Hz群と20Hz群のいずれにおいても刺激前と比較し,刺激後や刺激後20分において,ペグボードやカウント回数は有意に動作が速くなった.また,carry-over effectも誘起できた.高頻度rTMSに関する先行研究は,健常者のMEP の最大振幅が増大したという報告やfMRIにて刺激部位の脳活動が活発になったという報告がある.本研究では,健常者であっても同側大脳皮質の興奮を促通することで,上肢機能の向上がみられた.また,刺激時間は5Hz群12分,20Hz群7分と5分の差がある.rTMSは同一姿勢にて不動を強いられるため,長時間の刺激は苦痛となる可能性がある.そのため,本研究では刺激時間の短い20Hzの方が良いと推察された.高頻度rTMSによる治療は,脳卒中のみならず,脊髄損傷や難治性疼痛など多岐にわたっている.本研究は健常者に対して実施しているため,今後は脳卒中や脊髄損傷などの症例において同様の効果が得られるかを調査することが期待される.【理学療法学研究としての意義】従来,経験則で行っていたrTMS設定を決定する一助となる.また,rTMSによるcarry-over effectが明らかになることで,さらに短時間で負担の少ないrTMSが実施可能となり,運動療法の併用療法において安全で効率の良い治療を行えるため,臨床的な意義は大きいと考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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