理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-01
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一般口述発表
筋電誘発電気刺激が上肢リーチ動作及び筋活動に与える即時変化
シングルケースデザインにおける検討
澳 昂佑川原 勲上原 信太郎小嶌 康介庄本 康治
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抄録
【はじめに、目的】私たちは、日常生活を送る上で上肢の前方リーチ動作を頻繁に行っている。しかし、脳卒中後に起こる上肢運動麻痺は、リーチ動作における運動の自由度を制限し、脳卒中患者の日常生活動作を制限する大きな要因となっている。麻痺患者がリーチ動作を行う際、上腕筋群には異常な同時収縮が生じ、随意的な肘関節の伸展が制限されることが多い。これに対し、体幹の運動でリーチ動作を代償する戦略が多く取られ、その結果、運動の自由度は著しく低下する(Cirstea.M.C.2000)。したがって、脳卒中患者において肘関節伸展機能を改善することは、適切なリーチ動作を促し、より自由度の高い日常生活動作を獲得するためには重要であると考えられる。近年で脳卒中患者の上肢に対するアプローチとして筋電誘発電気刺激(Electromyography-triggered neuromuscular stimulation:ETMS)が推奨されている。ETMSは、随意運動時に生じる筋放電を測定し、設定された閾値を越えると電気刺激が誘発され筋収縮を引き起こす治療方法である。ETMSでは運動意図と実際の運動発現の同期化および固有感覚フィードバックにより麻痺側上肢の運動機能改善に寄与することが示唆されている。(Francisco.G.1998)。そこで本研究は、麻痺患者の肘関節伸展筋に対してETMSを付加することでリーチ動作における肘関節伸展が改善され、運動の自由度が増大するのではないかと考え、その効果を検証した。本研究では、脳卒中患者一例に対してシングルケースデザインを適用し、肘関節伸展筋へのETMSがリーチ動作に及ぼす影響を運動機能及び、筋活動から検証した。【方法】対象は脳出血発症5か月経過した64歳男性とした。障害名は右片麻痺であった。病巣は被殻および内包であった。研究参加時の麻痺側上肢のBrunnstrom Recovery Stageは上肢4、手指4であった。Modified Ashworth scale(MAS)は上腕二頭筋にて1+であった。本症例の麻痺側上肢は補助手として使用できないレベルであった。また本症例は重度の認知症、高次脳機能障害、麻痺側肩関節亜脱臼、麻痺側上肢の疼痛はなかった。実験デザインはABA´によるシングルケースデザインを設定した。A、A´期はコントロール課題として単純リーチ課題を実施させた。B期は、単純リーチ課題実施時にETMSを付加した。各介入は20分とした。ETMS にはIntelect Advanced Combo(Chattanooga社)を使用した。対象筋は麻痺側上腕三頭筋とした。各介入前後に単純リーチ動作を評価した。対象者には聴覚合図に応じて快適なスピードでリーチ動作をしてもらった。運動機能の評価として三次元動作解析装置(ローカス3D MA-3000)を使用し、最大体幹前傾角度、最大肘関節伸展角度を算出した。筋活動の評価は表面筋電計(Noraxson社製 MyoSystem2400)を用いて解析した。対象者の左上肢の上腕三頭筋、上腕二頭筋、大胸筋、三角筋に電極を設置し、動作時間におけるEMG平均値を算出した。 EMG平均値は各介入前の値の100分率を算出した。また、リーチ動作における上腕三頭筋と上腕二頭筋の同時収縮の影響を評価するために、Frost ら(1997)の方法を参考に、co-contraction index (CI)を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し、阪奈中央病院倫理委員会の承認を得て実施された。被験者には実験の目的、方法、及び予想される不利益を説明し同意を得た。【結果】ABA´各終了時の上腕三頭筋のEMG変化率はそれぞれ、93.2±0.1%、185.7±0.1%、72.1±0.1%であった。 CIは78.1±0.1%、63.9±0.1%、82.1±0.1%、であった。肘関節伸展角度の平均値は-78.1±0.3°、-71.3±0.1°、-100.4±4°であった。体幹前傾角度の平均値は26.5±0.4°、3.8±0.4°、16.6±4°であった。MASは変化しなかった。【考察】上肢リーチ動作時に上腕三頭筋に対してETMSを付加することで、上腕三頭筋の筋活動が増加し、上腕三頭筋と上腕二頭筋の同時収縮が減少した。その結果、肘関節伸展角度を増加し、体幹前傾による代償動作が減少したものと考えられる。しかしながら今回は即時効果の検証であり、長期間の実施によりどのような変化をもたらすかは不明である。【理学療法学研究としての意義】ETMSが麻痺側上肢リーチ動作、筋活動にもたらす影響が示唆された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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