理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-18
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ポスター発表
運動器機能向上に向けた中高齢者の慢性腰痛に対する運動プログラムについて
米澤 遥山本 泰雄浦本 史也皆川 裕樹佐竹 恵治向井 康詞
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キーワード: 慢性腰痛, 腰痛運動教室, QOL
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抄録
【はじめに・目的】厚生労働省の国民生活基礎調査の有訴率をみると、腰痛は男女ともに上位を示しており、同調査における要支援の原因ともなっている。そのため、厚生労働省の運動器機能向上マニュアルに膝痛・腰痛に関する評価と運動プログラムが追加された。しかし、介護予防や健康増進の現場では汎用性の高い、安全で有効的な運動プログラムは確立されていない。そこで今回、慢性腰痛を有する中高齢者に運動プログラムを実施し、その安全性と有効性について検証した。【方法】対象は60歳から79歳までの腰痛予防に関心があり、医師から運動許可が得られている慢性腰痛を有する者とし、運動群と在宅群を公募した。運動群は通所プログラムを3ヶ月間、1回90分、週2回、1期8回×3期間の全24回と健康講話を1回実施、在宅群は健康講話を1回実施した。運動プログラムは、体幹安定・固定の意識を高める意識期、体幹筋群の強化、四肢の協調を図る強化・協調期、応用動作を獲得する応用期の3期に分けて実施し、健康講話は腰痛に関する姿勢や生活指導について説明した。評価・検討項目は柔軟性(SLR、長座体前屈)、体幹筋力、患者立脚型機能評価 (Japan Low Back Pain Evaluation Questionnaire(以下JLEQ)、SF-36)、アンケートとし、初回と介入3ヶ月後に測定した。体幹筋力はBiodex system3を使用し、体幹屈曲15°位、30°位にて等尺性収縮での屈曲、伸展筋力を測定した。統計学的処理は各群の介入前後の比較には対応のあるt検定、群間比較には対応のないt検定を行い有意水準5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、本研究の主旨および目的をスライドと書面にて説明し書面にて同意を得た。【結果】運動群18名(男性7名,女性11名,平均年齢68.6±6.0歳)、在宅群44名(男性18名,女性26名,平均年齢69.0±5.8歳)の参加があった。介入後、脱落者は運動群3名、在宅群12名、運動群の教室参加率は93%であった。両群の腰痛内訳は脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、すべり症等であり2群は一般的な中高齢者の慢性腰痛者群であることが示された。介入前後で運動群は、長座体前屈、体幹筋力(体幹屈曲15°位での屈曲、伸展、体幹屈曲30°位での屈曲)、JLEQ、SF-36、在宅群では長座体前屈、体幹筋力(体幹屈曲15°位での屈曲、伸展、体幹屈曲30°位での伸展)で有意位な改善がみられた。2群間では体幹伸展/屈曲比、JLEQにて有意な差が認められた。アンケート結果では、介入後運動群で良化11名、不変3名、新たな腰痛1名、在宅群では良化6名、不変28名、悪化1名、新たな腰痛4名であった。【考察】運動群において脱落者の3名は、運動プログラム以外のスポーツにて痛みが悪化した者や元々不定愁訴の多い者であった。高い教室参加率(93%)は運動プログラムが対象者にとって興味をひくものであり、運動頻度、運動負荷は適切で安全であったことを示唆するものと考える。また患者立脚型機能評価(JLEQ、SF-36)、アンケート結果より主観的には腰痛が改善しており、運動プログラムは何らかの効果があったと考える。一方、身体機能評価では、長座体前屈は改善し、SLRでは有意な改善が認められなかったことから、腰背部の柔軟性が向上した可能性が示唆される。しかし在宅群においても改善を示し、2群間で有意な差が認められないことから、腰痛改善因子として柔軟性と腰痛の明確な関係は見出せなかった。体幹筋力では、体幹屈曲30°位での屈曲筋力は運動群のみで改善し、介入後の伸展/屈曲比で2群間に有意な差が認められたことより、運動プログラムによる何らかの効果はあったと推測される。しかし、体幹屈曲15°位では在宅群でも改善しており、体幹筋力においても明確な腰痛改善因子として示唆されず、測定法、解釈は今後の検討課題となった。またQOLの改善についても、体幹を意識した日常動作練習により身体の使い方が変化したことが改善要素と考えられるが、今後更なる詳細な検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】慢性腰痛を有する中高齢者に対し運動プログラムを実施することで主観的な腰痛の改善、QOLの向上に繋がることが示唆され、プログラムの安全性、有効性が示された。今後、腰痛改善因子の詳細な検討が必要であることが示された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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