理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-36
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ポスター発表
膝関節不動が関節軟骨におけるCD44 発現に及ぼす影響
長井 桃子伊藤 明良山口 将希飯島 弘貴太治野 純一張 項凱井上 大輔広瀬 太希青山 朋樹黒木 裕士
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キーワード: 関節拘縮, 関節軟骨, CD44
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抄録
【はじめに、目的】長期間の関節の不動化は関節拘縮につながる。関節拘縮に伴う関節構成体変化の病態理解は理学療法介入の治療根拠を確立するうえで不可欠である。関節を不動化すると軟骨細胞数が変化し、軟骨基質が変化することが明らかにされている。本研究において我々は軟骨基質に存在するヒアルロン酸(以下HA)レセプターであるCD44 の発現に着目し、関節固定後の関節軟骨の変化を実験動物ラットによる膝関節不動モデルを用いて病理組織学的に検討することを目的とした。【方法】対象は8 週齢のWistar系雄ラットを用いた。それらを創外固定で膝関節を固定し拘縮を作成した固定群(n=15)と非介入のコントロール群(n=10)に無作為に分けた。固定群は関節固定期間ごとに1、2、4、8、16 週間の5 グループに分けた。コントロール群は固定群の実験終了時と同週齢まで自由飼育した。固定群の膝関節固定法は瀧田らに倣った方法(理学療法学,2008)にて膝拘縮モデルを作成した。施術方法は、キルシュナー鋼線を大腿骨骨幹中央部および脛骨骨幹中央部にそれぞれ1 本ずつ前額−水平軸にそって貫通させ、歯科用レジンを用いて一定角度(140 ± 5°)でキルシュナー鋼線を接合固定した。固定群は左後肢を固定側とし、右後肢は固定せずキルシュナー鋼線のみの挿入とした。固定が外れている際はただちに開始時と同屈曲角度で固定した。拘縮の完成は膝関節の可動性の低下で確認した。飼育終了後、安楽死させたのち膝関節を採取し4%パラホルムアルデヒドにて48 時間の浸漬固定後、10%EDTA溶液にて脱灰し、矢状面が観察できるように膝関節を切り出し、中和、脱脂操作を経てパラフィン包埋した。6 μmで薄切したのち、H-E染色を行い組織観察、軟骨厚比較を行った。観察部位は内顆中央部矢状面とし、膝関節屈曲固定状態での大腿骨・脛骨の接触面・前方非接触面を評価部位とした。免疫組織化学的分析は、抗CD44 を一次抗体とし、ABC法にて行った。【倫理的配慮、説明と同意】所属大学の動物実験委員会の承認を得て実施した。【結果】固定術を施した実験群すべての膝関節で拘縮の完成が確認された。コントロール群の全観察部位と実験群の両非接触面において、明らかな軟骨厚の変化は見られなかった。固定群の接触面脛骨部については固定処置後8 週、16 週で軟骨厚が著明に減少していた。コントロール群では、飼育開始から8 週、16 週後には深層におけるCD44 陽性細胞の減少がややみられるものの、観察部位におけるほぼ全層でCD44 陽性細胞が観察された。固定群では、大腿骨・脛骨両接触面で固定処置後8 週、16 週で著明な細胞数の減少とCD44 陽性細胞数の減少がみられた。またCD44 陽性細胞の減少は両骨とも、特に軟骨深層の下骨に近い部位で観察された。軟骨細胞数・CD44 陽性細胞数の割合は不動期間の長期化に伴い減少傾向であり、その傾向は特に大腿骨・脛骨接触面において強くみられた。【考察】CD44 へ結合しているHAは軟骨細胞表面へプロテオグリカン会合体を結合する働きを持ち、その作用は軟骨代謝や恒常性の維持に関与しているといわれている。本研究でみられた不動期間の延長に伴うCD44 陽性細胞割合の減少は、CD44 とHAの結合破綻の可能性を示唆している。またその傾向は軟骨下骨に近い深層で観察されたことから、軟骨同士が接触する表層よりも、下骨に近い細胞における軟骨代謝が影響を受けやすい可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究でみられた、関節の不動化を行った軟骨でみられた細胞数の低下とCD44 陽性細胞の割合の低下は、関節拘縮下における軟骨の病態理解につながると考えられる。また、今後さらに軟骨変化のメカニズムの解明を進めることは、拘縮関節軟骨に対する理学療法介入の根拠につながると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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