理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-02
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ポスター発表
ヒト骨髄間質細胞の神経分化誘導−頭蓋骨と腸骨での比較・検討−
上床 裕之光原 崇文大倉 優之介松本 昌也中田 恭輔深澤 賢宏猪村 剛史孫 亜楠カレーシー エルハム古川 拓馬河原 裕美山口 智栗栖 薫弓削 類
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抄録
【目的】ヒト骨髄間質細胞 (human bone marrow stromal cells:以下hBMSCs) は,様々な細胞に分化する能力を有する細胞である.また,自家移植が可能で,免疫拒絶や倫理的な問題を回避できるという大きな利点を持つ.すでに,脳梗塞患者に対して腸骨由来hBMSCs (iliac bone marrow stromal cells:以下iBMSCs)を用いた細胞移植の治験も行われており,神経再生医療への期待が高まっている.我々は,新たなhBMSCsの候補として,頭蓋骨由来hBMSCs (cranial bone marrow stromal cells:以下cBMSCs) に着目した.cBMSCsは,頭蓋骨の骨髄に存在し,通常の脳神経外科手術で行う穿頭の際に採取することができる.我々は,cBMSCsが神経細胞に分化しやすいという報告も行っており,移植後の神経再生の細胞のソースとして有用であると考えている.しかし,iBMSCsとcBMSCsの特性について,比較検討した報告はみられない.そこで本研究では,神経分化誘導後に,cBMSCsとiBMSCsとの比較を行い,神経分化能にどのような違いがあるかを形態学的・分子細胞生物学的な解析を行い検討した.【方法】ヒトの頭蓋骨および腸骨から骨髄細胞を採取し,培養皿に播種した.2 日後に培地交換によって浮遊細胞を除去し,培養細胞とした.細胞が70% confluentに達するまで増殖培地で培養した後,神経分化誘導培地に移して神経分化誘導を行った.培地交換は3 日に1 回行い,神経分化誘導培地での培養は10 日間行った.神経分化誘導前後でサンプリングを行った.培養条件は5%CO2,95%air,37℃とした.解析は,神経分化誘導前の細胞に対しては,FACSを用いて細胞表面の抗原解析を行った.形態学的解析として,位相差顕微鏡を用いた形態観察と,神経分化マーカーを用いた免疫染色を行った.分子細胞生物的解析としては,神経分化誘導前後での神経系細胞の各種マーカーの発現を, RT-PCR法,Western Blot法にて解析した.【説明と同意】本研究は,細胞採取に際して,広島大学大学院医歯薬保健学研究科の倫理審査の承認を得た.また,対象患者には,手術前に骨髄採取を行うことを十分説明し,文書による同意を得て行った.【結果】神経分化誘導前では,FACSにおいて,iBMSCsと同様に,cBMSCsでも間葉系マーカーの発現がみられた.また,cBMSCsでは,分子細胞生物学的解析により,神経外胚葉マーカーの発現がみられた.神経分化誘導後の形態学的解析では,cBMSCsにおいて,iBMSCsよりも,神経細胞様の突起を伸ばす細胞が多く観察された.免疫染色においても,神経分化誘導後に神経分化マーカー陽性細胞がcBMSCsで多く観察された.また,分子細胞生物学的解析では,cBMSCsでiBMSCsよりも神経分化マーカーの強い発現がみられた.【考察】cBMSCsは,iBMSCsよりも神経細胞に分化しやすいことが,形態学的・分子細胞生物学的解析にて示された.これは,他の骨が発生学的に中胚葉由来であるのに対し,頭蓋骨の一部が神経系と同様に外胚葉由来であるためと考えられる.実際に,cBMSCsは神経分化誘導前でも神経外胚葉マーカーや,幼若な神経マーカーの発現がみられた.このことから,cBMSCsは,外胚葉由来の細胞集団を多く含む細胞であると考えられる.【理学療法学研究としての意義】cBMSCsは神経系細胞へと分化しやすいことが示唆された.本研究は,ヒトの細胞を用いた神経分化誘導の実験で,従来の動物細胞を用いた実験よりも臨床に直結するものである.そのため,中枢神経系理学療法の基礎としてだけでなく,再生医療の発展にも貢献するものと思われる.また,hBMSCsの採取部位による性質の違いについて明らかにしたことは,今後細胞移植治療を行っていく上で非常に重要であると考えられる.今後は,cBMSCsに電気刺激を加えたり,cBMSCsを中枢神経系の疾患モデル動物に移植した後に運動を行うなどして,物理療法や運動療法の効果について検討し,理学療法のエビデンスの向上に貢献したい.
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© 2013 日本理学療法士協会
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