理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-02
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ポスター発表
神経芽細胞腫培養上清が筋芽細胞分化に与える影響
古川 拓馬深澤 賢宏大倉 優之介上床 裕之中田 恭輔孫 亜楠猪村 剛史Khalesi Elham松本 昌也河原 裕美弓削 類
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抄録
【はじめに、目的】近年,幹細胞を用いた再生医療への注目が高まっており,障害された身体や臓器の再生,機能回復を図る革新的な医療技術として期待されている.筋は,「収縮」という生命活動に必要不可欠な機能を持っている.in vitroにおいて,幹細胞から骨格筋細胞を分化誘導する研究も行われているが,これまでに収縮する筋線維は作成されていない.筋の再生医療に関する研究は発展途上であり,治療法として応用可能で安全性の高い筋細胞の分化誘導技術の開発が望まれている.細胞の増殖や分化は,成長因子やホルモン,サイトカイン等の液性因子と細胞表面に存在する特異的受容体との結合によって活性化される細胞内シグナル伝達による調節を受ける.筋細胞でも,液性因子の刺激によるシグナル伝達を介してMyoDファミリーの発現が誘導され,増殖や分化が制御されている.筋芽細胞の分化が,運動神経に似た性質を持つ神経芽細胞腫との混合培養によって促進されるとの報告があることから,神経芽細胞腫が産生する液性因子が筋の分化に影響するのではないかと考えた.そこで本研究では,ラット骨格筋由来の筋芽細胞を培養し,神経芽細胞腫の培養上清を用いて分化誘導することで,筋芽細胞分化に対して神経芽細胞腫の培養上清が与える効果を検討した.【方法】ラット骨格筋由来の筋芽細胞(L6 細胞株)およびマウス・ラット雑種神経芽細胞腫(NG108-15 細胞株)を各々培養し,L6が100%コンフルエントになった時点で,分化誘導培地に交換した.分化誘導時に,通常の分化培地を使用した通常分化群とNG108-15 増殖培地を調整した培地を使用した上清分化群の2 群に分け,分化誘導から2 日,4 日,6 日後で両群を比較した.倒立型位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化を観察し,蛍光免疫染色法によってmyosin fastの発現を評価した.また,RT-PCR法を用いて,筋分化マーカーであるmyogeninおよびMRF4 の発現を解析した.同様の実験系で分化誘導培地に交換するタイミングを4 日間遅らせる実験を行い,L6 培養状態の違いによってNG108-15 培養上清が筋分化に与える影響が変化するか検討した.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,(財)ヒューマンサイエンス振興財団 研究資源バンクより購入したL6 細胞株およびDS PHARMA BIOMEDICAより購入したNG108-15 細胞株を使用した.【結果】L6 が100%コンフルエントに達したと同時に分化誘導を行った場合は,通常分化群と比べ上清分化群で蛍光免疫染色によるmyosin fast陽性率が低く,筋分化,筋管形成が抑制さていた.100%コンフルエントに達して4 日後に上清を添加した場合には,上清分化群でmyosin fast陽性率が高く,筋管が多く観察された.【考察】本研究では,神経芽細胞腫培養上清を添加するタイミングの違いによって,筋芽細胞の筋分化を抑制する効果と促進する効果があることが示された.筋芽細胞とNG108-15 を混合培養する実験は,神経筋接合部のモデルとして多く用いられ,シグナル経路の活性化等により筋および神経の分化に影響することが報告されている.さらに,インスリン様成長因子(IGF)には異なるシグナル経路が存在し,筋芽細胞増殖時では分化を抑制し,筋分化時では分化を促進する作用を持つという報告がある.このことから,NG108-15 培養上清に含まれる因子によって,何らかのシグナル経路が活性化され,筋芽細胞分化に作用したことが考えられる.また,上清を添加するタイミングによって活性化されるシグナル経路が異なり,分化を抑制または促進するという逆の結果になったと考えられる.今後,骨格筋分化のメカニズムを含め,分化誘導方法等をさらに詳細に検討したい.【理学療法学研究としての意義】難治性疾患に対する新たな治療法として再生医療の開発が進んでいる.筋ジストロフィー症など筋変性疾患おいては,現時点で有効な治療法は確立されていないため,臨床応用が期待されているが,これまでの細胞移植治療では移植細胞の分化率や生着率が低いことが難点とされている.本研究で示されたNG108-15 培養上清が筋細胞の分化に与える効果は,筋の再生医療において,筋分化誘導技術の発展に貢献すると考える.さらに筋再生医療では,どのような理学療法が有効であるか考察していきたい.
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© 2013 日本理学療法士協会
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