理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-30
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ポスター発表
着地動作における膝外転,内旋角速度の特性とその性差
上野 亮山中 正紀石田 知也谷口 翔平武田 直樹
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抄録
【はじめに、目的】膝前十字靱帯(ACL)損傷はその約70%が非接触型損傷とされ,他者と明らかな接触がない着地動作やカッティング動作などにおいて生じ,非接触型ACL損傷発生率は男性に比べ女性で2~8倍高いと報告されている.屍体膝研究では,膝外転・内旋角度の増加によってACLの歪みが大きくなることが示されており,動作時における膝kinematicsの性差がACL損傷発生率の性差につながっていると推察されている.ACL損傷は接地後早期に生じるという事が過去に報告されているが,この時期における膝外転・内旋角度は小さく,ACLの歪みが小さいことが予測され,膝関節角度の検討のみでは受傷メカニズムの説明は困難であると考える.ACLは素早く引き伸ばされることによってストレス(応力)が高まることが報告されており,膝外転・内旋角速度が高まることでACLストレスが高まる可能性がある.しかし,最大膝外転・内旋角速度を示す時期や性差についての報告は見られない.よって本研究の目的は着地動作における最大膝外転・内旋角速度が生じる時期および最大角速度の性差について検証することとした.【方法】健常成人10名(男性5名,女性5名 )を対象とした.除外基準は下肢の骨折および膝ACL 損傷の既往を有する者,過去6ヶ月間に下肢の整形外科的な既往を有するものとした.着地動作の計測には赤外線カメラ10台(Motion Analysis 社製)と三次元動作解析装置Cortex(Motion Analysis 社製,200Hz),床反力計2 枚(Kistler社製,1000Hz)を用い,反射マーカーは被験者の右下肢の大腿,下腿などに39個貼付した.動作課題は30cm台から降り,着地後直ちに最大垂直跳びを行うDrop Vertical Jump(DVJ)とし,成功3施行を記録し,解析に用いた.初期接地から最大膝屈曲までを解析相とし,SIMM(MusculoGraphics 社製)を用いて各試行の5msec毎の膝外転・内旋角度および角速度を算出した(それぞれ外転が負,内旋が正を示す). 統計学的検定は対応の無いt検定を用い,最大膝外転・内旋角速度およびそれが生じた時期,またその時点での膝外転・内旋角度の性差について検討し,さらに最大膝外転角速度と最大膝内旋角速度が生じた時期を比較した.有意水準はP<0.05とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当大学院倫理委員会の承認を得て行った.対象には事前に口頭と書面で本研究の目的,実験手順,考えられる危険性などを説明し,その内容について十分に理解を得て,参加に同意した者は同意書に署名をし,研究に参加した.【結果】最大膝外転角速度は女性が有意に高い値を示した(女性153.6±88.2°/s,男性91.1±37.5°/s,P=0.021)が,最大膝内旋角速度については有意差が無かった(女性131.4±108.7°/s,男性140.3±87.8°/s).各角速度最大時の角度は外転および内旋ともに女性が有意に大きな角度(各々、女性-2.2±4.4°,男性2.0.±3.0°,P=0.005;女性5.8±2.8°,男性0.2±5.5°,P=0.002)を示した.また最大角速度を示す時期については膝外転・内旋共に有意な性差を認めなかった.さらに最大角速度を示す時間は外転よりも内旋が有意に早期であった(外転:63.0±24.6ms,内旋:19.7±15.3ms,P<0.001).【考察】最大膝外転角速度について本研究では女性が高い値を示した.この結果は着地動作において女性はACLの歪み率が高い瞬間がある事を示唆しており,またその時期の膝外転角度についても女性がより大きいため,女性は高いACL損傷リスクを有していると考えられる.最大膝内旋角速度について性差は見られず,被験者間でばらついた値を示しており,女性1例は内旋運動を示さなかった.膝回旋については個人で特有の戦略をとっていると思われる.また最大膝外転・内旋角速度を示す時間について性差は見られなかったが,最大膝外転角速度よりも最大膝内旋角速度が有意に早く訪れる事を示した.今回の結果では内旋運動が停止する時期に膝外転角速度が最大となることが多かった.ACL損傷場面のビデオ解析では初期接地から50msec以内に受傷しているという報告がある.実際のACL損傷場面では最大膝外転角速度を示す時間が50msecより早く訪れ,内旋最大角速度を示す時間と重なることでACLの歪み,歪み率が高くなりACL損傷が生じているのかもしれない.しかし,ビデオ解析では膝関節最大角速度を示す時間の詳細な解析は困難であり,この考察は推測の域を出ない.ACL損傷メカニズムの解明には膝関節角速度が最大となるタイミングについての検討が重要と考える.【理学療法学研究としての意義】本研究はACL損傷場面で見られる着地動作において膝関節運動の角速度の値やその時期などの特性は性差を示し,ACL損傷のさらなる解明に有用な情報を提供すると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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