理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-03
会議情報

一般口述発表
前方進入法による人工股関節全置換術(DAA-THA)術前後における2ステップテストの有用性
-10m歩行速度との関連性-
小松 絵梨子妹尾 賢和澤野 靖之石垣 直輝平尾 利行
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】当院ではDAA-THAを施行しており、術後3週から筋力トレーニングを開始し、術後12週において日常生活動作やスポーツ活動を制限なく許可している。また術前後の歩行能力の評価として10m歩行速度測定に加え、2ステップテストを導入している。2ステップテストに関する先行研究では健常者等を対象に10m歩行速度、6分間歩行テスト、Functional reach、Time up and go、立ち上がりテストなどの機能評価との相関があり、日常生活の自立度や高齢者転倒リスクを簡便に推測し得ると示している。また2ステップ値1.0以上で歩行自立度が高いと報告されている。厚生労働省でも転倒リスク評価のセルフチェックの項目として2ステップテストを紹介しており、近年普及されつつある評価法である。しかし、変形性股関節症患者やTHA術後患者における2ステップテストの関連性を述べた報告はない。そこで我々は、THA術前後の各時期における2ステップ値と10m歩行速度の関連性とその有用性を検討した。【方法】対象は2012年4月~8月に当院にて進行期、末期の変形性股関節症と診断され、DAA-THAを施行した55名67股(女性49名、男性6名)、平均年齢61.9(36-85)歳、平均身長156.2±7.4cm、平均体重55.4±9.8kgを対象とした。内訳は両側同時THA12名、片側THA43名であった。crowe2型以上の変形性股関節症や特発性大腿骨頭壊死、骨折例は除外した。測定は術前、術後3週、術後6週、術後12週時に実施した。10m歩行速度は十分な練習を行った後、10m測定区間の手前3mから歩行を開始し、16m地点を歩行終了位置とした。測定にはストップウォッチを用いて1/100秒単位で計測し、可能な限り最大努力で1回測定した。その際杖の使用は許可した。2ステップテストとはバランスを崩さずに実施可能な最大2歩幅長(開始肢位の両側つま先から最終肢位のつま先までの距離)を身長で除した値である2ステップ値を算出する方法である。測定にはメジャーを用いて1cm単位で計測し、2回測定のうち最大値を採用した。先行研究により踏み出し脚による左右差はないと報告されているため(r=0.99、P<0.001)、踏み出し脚は指定せず踏み出しやすい脚から実施した。ただし2回目も同脚となるように実施した。また級内相関係数ICC=0.92で良好な再現性が証明されている。統計学的処理は、各時期における2ステップ値と10m歩行速度の関連性をSpearmanの相関係数を用いて検討し、有意水準は5%とした(SPSS Ver.12.0)。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき対象者に人権擁護がなされていることを説明し同意を得て実施した。【結果】2ステップ値と10m歩行速度の相関係数は、術前r=-0.717、術後3週r=-0.727、術後6週r=-0.703、術後12週r=-0.748であり、すべての時期において高い負の相関を認めた(P<0.01)。【考察】先行研究では2ステップテストは広い測定空間を必要としない簡便な評価法であり、高い再現性が証明されている。身長を指標としているため、医療者側だけでなく患者本人にも理解しやすい目標値の提示を可能とすることから、臨床における有用性は高い。村永らは健常者等を対象に2ステップ値と最大努力10m歩行速度は高い相関があると報告しているが、各疾患における報告は少ない。本研究ではTHA術前後において2ステップ値と10m歩行速度に高い相関が見られた。2ステップテストは変形性股関節症患者やTHA術後患者の歩行能力を簡便に推定する方法として有用であると考える。【理学療法学研究としての意義】2ステップテストは、代表的な歩行能力推定法である10m歩行速度や6分間歩行テストなどと比較して、広い測定空間を必要としない簡便な評価法であり、厚生労働省などでも転倒予防の指標として広く取り上げられている。現在は高齢者や健常者を中心に報告されているが、本研究より変形性股関節症患者、THA術後患者において歩行能力を簡便に推定する方法として2ステップテストの有用性が示唆された。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top