理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-03
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一般口述発表
人工膝関節全置換術術後早期患者への弾性包帯の導入が膝周囲機能に与える効果
村上 武史久原 聡志中元 洋子明日 徹舌間 秀雄伊藤 英明加藤 徳明佐羽内 研蜂須賀 研二
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抄録
【はじめに】人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:以下TKA)術後早期患者の手術侵襲に伴う炎症症状の中で、腫脹の増悪は、膝関節伸展筋力低下や身体機能の低下を導くと報告されている。術後早期の腫脹に対して、弾性ストッキングや寒冷療法を使用した報告が散見されるが、弾性包帯を使用しての腫脹管理に関する報告は少ない。今回、TKA術後早期患者に対し、弾性包帯を使用した付加的な腫脹管理の導入が、術後早期の膝周囲機能に与える効果について検討した。【方法】2012年1月~2012年8月に当院整形外科にTKA目的で入院した変形性膝関節症(以下膝OA)患者22名(男性:3名、女性:19名、平均年齢:74.9±10.2歳、BMI:25.5±7.7kg/m²)を対象とした。中枢神経疾患や神経筋疾患を有する者、下肢・脊椎に手術既往のある者(反対側TKA患者は除く)、入院前にT-cane以外の歩行補助具を使用していた者、重度の認知機能低下がある者は除外した。対象者を無作為にコントロール群(C群)と弾性包帯群(E群)に割り当て、当院TKA術後プロトコール(内容;可及的荷重による歩行練習、膝関節可動域運動、筋力増強運動、適宜アイシング)に従い、理学療法を実施し、病棟では弾性ストッキングを着用して術後管理を実施した。E群は、弾性ストッキングに加え、清拭や入浴以外の病棟生活中、患者が苦痛に感じず、阻血がない程度の高強度にて下腿遠位部から大腿近位部まで弾性包帯を装着した。対象者の年齢、性別、Body Mass Index(以下BMI)、Kellgren-Lawrence分類(以下K-L分類)、手術時間、術中の水分バランスに関しては、カルテより後方視的に収集した。術前後のPT評価項目は大腿周径(膝蓋骨直上、5cm、10cm、15cm)の術後値を術前値で除した値、膝関節屈曲伸展関節可動域、膝関節屈曲伸展筋力(Hand-Held Dynamometerを使用し、ピーク値の体重比(N/kg)を算出)、疼痛(安静時痛、動作時痛)、10m歩行時間(最大努力)、膝OA患者機能評価尺度(Japanese Knee Osteoarthritis Measure:以下JKOM)とした。以上の評価を術前は手術1~2日前、術後は2週±2日以内に実施した。術前と術後の各項目の2群間の比較は、対応のないt検定を用い、有意水準はそれぞれ5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り、対象者に対して十分な説明を行い、本研究の趣旨を理解していただいた上で同意を得た。また当大学病院倫理委員会の承認を得た。【結果】術前の群間の比較では、すべての項目で有意差を認めなかった(p>0.05)。術後2週目の群間での比較では、膝関節屈曲可動域(C群:109.55±4.72°、E群:120.45±10.11°)、大腿周径(膝蓋骨直上)(C群:102.96±4.04%、E群:99.05±3.96%)、動作時痛(C群:42.00±27.61mm、E群:10.73±5.97mm)、10m歩行時間(C群:14.83±4.78秒、E群:8.89±1.68秒)で、それぞれ有意差を認めた(p<0.05)。膝関節伸展筋力は、群間で有意差は認められなかったが、E群(1.32±0.42N/kg)はC群(1.01±0.32N/kg)に比べ高値を示す傾向であった(p=0.07)。その他の項目において有意差は認めなかった(p>0.05)。【考察】今回の結果よりE群は、病棟生活中も弾性包帯を併用したため、C群に比べ腫脹管理が良好であったと思われた。この要因としては、弾性包帯は姿勢の変化による圧迫圧の上昇が大きく、動作時の筋ポンプ作用を増強させることで、膝周囲の腫脹を抑制できたのではないかと考えた。腫脹が抑制されたことで膝関節屈曲可動域、動作時痛に有意差を認め、10m歩行時間が短縮したものと考えられた。膝関節伸展筋力は有意差が認められなかったが、E群の方が高値を示す傾向(p=0.07)であったことから、腫脹軽減により筋出力に影響を及ぼしたと考えられた。以上より弾性包帯による術後の付加的な腫脹管理が、膝関節機能の改善にも繋がった。その要因として弾性ストッキングに加えた弾性包帯の圧迫が、関節内圧や瘢痕組織の形成を減少させた可能性が考えられた。今後の課題として、弾性包帯導入群の長期的な効果についての検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】TKA術後早期患者に対して弾性包帯の導入による付加的腫脹管理は、術後膝周囲の機能の改善に対して有効であることが示唆された。弾性包帯の早期からの導入が、TKA術後患者のより効率的な機能改善に繋がると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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