理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-15
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ポスター発表
地域在住高齢者における運動機能と生活活動性との関連
尾崎 麻子浅川 康吉
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抄録
【はじめに、目的】地域在住高齢者における生活活動性の維持・向上は介護予防事業の主要な目標の1つである。「運動器の機能向上」プログラムは介護予防事業として多くの自治体で行われており、運動機能の向上が生活活動性の向上を促すことが期待されている。しかしながら生活機能が自立している高齢者における生活活動性にはさまざまな要因が関わると思われ、運動機能がどのように関わるかについて具体的知見は乏しい。本研究の目的は、地域在住の一般高齢者を対象に生活活動性と運動機能との関連性を明らかにすることである。【方法】対象者は市内3か所の老人福祉センター(以下、センター)を利用する地域在住高齢者74名であり、平均年齢76.03±5.77歳、男性25名、女性49名であった。対象者の募集は各センターにポスターを掲示して行った。3ヶ所のセンターで84名の募集が得られ、このうち10名は体力測定やアンケート結果に欠損があったため除外した。運動機能の評価として歩行機能に着目し、Timed Up & Go(以下、TUG)と連続歩行距離を使用した。TUGは2回測定を行い、速い方の値を代表値とした。連続歩行距離は「10m未満」、「10~50m未満」、「50~100m未満」、「100~500m未満」、「500m~1km未満」、「1km以上」の6段階評価で自己記入式質問紙を用いて行った。生活活動性は生活空間の広がりに反映されると考え、Life-Space Assessment(以下、LSA)を用いて評価した。測定結果から各項目についてそれぞれ以下のように群分けを行った。TUGpとLSAは測定結果の速い順、得点が高い順からそれぞれ四分位に分割した。連続歩行距離は6段階のうち「1km以上」を選択した1km以上群とそれ以外を選択した1km未満群の2群に分けた。群間の関連はχ²検定を用いて分析し、有意水準は5%未満とした。なお、基本属性として年齢、性別、過去1年以内の転倒の有無およびセンターへの交通手段についても調査した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究の実施にあたり疫学研究に関する倫理指針及びヘルシンキ宣言を遵守した。本研究は群馬大学医学部の疫学研究に関する倫理審査委員会の承認を受けて実施した。【結果】全体のTUGの平均値は7.83±2.93秒であった。各群のTUG平均値は上位群から5.5±0.4秒(n=18)、6.5±0.3秒(n=18)、7.6±0.4秒(n=19)、11.5±3.6秒(n=19)であった。連続歩行距離の1km未満群は23名、1km以上群は51名であった。LSAにおける全体の平均得点は79.4±24.1で、各群の平均は上位群から110.2±2.3(n=19)、86.9±4.2(n=19)、68.8±7.2(n=18)、49.4±11.0(n=18)であった。TUGと連続歩行距離との間に関連性が見られた。TUGが1/4位群では1km以上群が16名(88.9%)と多く4/4位群では9名と(47.4%)少なかった。TUG、連続歩行距離の2項目とLSAとの間には有意な関連が見られなかったが、LSAの得点が高い群ほど連続歩行距離では1km未満群、TUGでは最も遅い群の割合が少ない傾向が見られた。基本属性のうち、センターへの交通手段4項目(自動車、徒歩・自転車、巡回バスなど、その他)はTUGとLSAの2項目と関連していた。TUG1/4位群では自分で自動車を運転して来る者が11名(61.6%)、4/4位群では巡回バスなどを選択している者が11名(57.9%)で最も多かった。LSAでは得点が高い1/4位群で自動車を運転して来る人数が12名(63.2%)と多かった。【考察】本研究では運動機能と生活活動性との間には統計学的に有意な関連はなかった。しかし、分布からLSAの得点が高い者ほど連続歩行距離では1km未満群、TUGでは最も遅い群の割合が少ない傾向が見られ、運動機能と生活活動性との間には直線的な関連ではなく、段階的な変化があるのではないかということが示唆された。生活機能が自立している高齢者における生活活動性にはさまざまな要因が関与する。今回の結果から、その一要因として交通手段が大きく影響を及ぼしているのではないかと考えられた。交通手段は、高齢者のさまざまな外出環境のうちの1つであると考えられる。つまり、生活空間は運動機能だけでなく、運動機能と交通という外出環境との組み合わせにより決まるのではないかと考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究の意義は、地域在住高齢者の生活空間を広げる要因として運動機能と交通手段の組み合わせを示した点である。介護予防事業において地域在住高齢者の生活空間を拡充するには「運動器の機能向上」を図るだけでなく、さまざまな身体機能を有する高齢者が外出できる交通・外出環境や体制、街づくりにも、理学療法士としての視点で積極的に関わることが重要であると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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