理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-15
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ポスター発表
予防給付受給者の日常生活活動度に対する身体機能と自己効力感の影響
12ヵ月間の縦断研究
山﨑 尚樹河辺 信秀阿部 みさ子藤澤 卓也日比野 寧友佐野 徳雄金子 浩治
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抄録
【はじめに、目的】近年,超高齢社会を迎え,本邦では要介護認定者数は2010年に487万人となり,なかでも要支援・要介護1の軽度認定者数は211万人となった.これにより2006年に新たな介護予防戦略が展開されることとなった.介護予防の目的は,運動器の機能向上を通じて日常生活活動度を向上させることにある,しかし筋力トレーニングなどの運動介入により運動機能は向上するものの,日常生活活動や生活の質の向上には至らないことが示唆されている.また,介護予防プログラムによる介入があっても日常生活活動度が低下することがある.これらに影響を与えるであろうと注目されているのが自己効力感(以下,SE)である.本研究では日常生活活動度の低下にSEと身体機能の変化がどう影響しているかを12ヵ月の縦断研究により観察することを目的とした.【方法】対象は予防給付による介護予防プログラムに参加している37例から1年間継続して調査可能であった23例を対象とし,介護度の変更や利用中止などの理由で調査不可能となった14例を除外した.年齢は80±18.4歳であった.性別は男性6例,女性17例であった.要介護度の割合は要支援1が8例,要支援2が15例であった.2011年6月から2012年6月の12ヵ月間で3ヵ月おき計5期,全例に身体機能アセスメント(以下,FCA),SE,日常生活活動度を測定した.FCAは,握力,片脚立位時間,歩行速度(快適・最大),Timed Up and Goテストの測定を行い,「運動器の機能向上マニュアル(改訂版)」の「特定高齢者・要支援高齢者別アウトカム指標の5分類」をもとに点数化し,その合計を指標とした.SEの評価は外出に対する自己効力感尺度を用いた.日常生活活動度の評価は老研式活動能力指標(以下,老研式),社会活動性指標の個人的活動項目(以下,活動性指標),過去一週間の15分以上の外出回数の3つの指標により評価した.その3つの指標ごとに日常生活活動度の第1期の測定結果と第5期の測定結果を比較し,数値が向上もしくは維持出来ている群(以下,A群)と第1期より第5期が低下している群(以下,B群)との2群に分類し二元配置分散分析を実施した.また一元配置分散分析とScheffeの多重比較により各群のFCAとSEの第1期から第5期までの経時的変化を比較した.さらにSpearmanの順位相関係数検定により,第5期の日常生活活動度に対するFCAとSEの関係をみた.統計処理はSPSS ver15.0J for windowを用いて有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に基づき,研究の趣旨・方法,個人情報の厳守について書面にて説明を行い十分に理解を得た上で同意を得た.【結果】二元配置分散分析において,FCAを従属変数とし,測定時期とA・B群の群分けを独立変数とした場合,各日常生活活動度の全測定時期において有意差はみられなかった.A・B群間差は,老研式と外出頻度において有意差がみられた(p<0.02).SEを従属変数とし,測定時期とA・B群の群分けを独立変数とした場合,各日常生活活動度の全測定時期において有意差はみられなかった.A・B群間差は,老研式,活動性指標,外出頻度の3つの指標全てにおいて有意差がみられた(p<0.02).次に,Scheffeの多重比較では群ごとにFCAとSEの経時的変化を確認したが,A・B群共に各測定時期での有意差はみられなかった.最後にSpearmanの順位相関係数検定による,第5期の日常生活活動度に対すFCAとSEの関係は,FCAは全期にわたって老研式と有意な相関がみられた(r=0.53, r=0.56,r=0.61,r=0.49, r=0.69;p<0.02).しかし,活動性指標及び外出頻度と有意な相関はみられなかった.SEは全期にわたって老研式と有意な相関がみられた(p<0.05).また,活動性指標は第1期と第5期に有意な相関はみられなかったが,第2~第4期においては有意な相関がみられた(r=0.63, r=0.48,r=0.48;p<0.02).外出頻度は第1期と有意な相関はみられなかったが,第2~第5期においては有意な相関がみられた(r=0.66, r=0.48,r=0.51,r=0.55;p<0.02).【考察】今回の研究結果から,FCA及びSEに経時的変化はみられなかった.しかし2群の間には差が見られた.多重比較でも群ごとの時期の差はみられなかった.つまり,時期を問わず全体にFCAとSEの低かった群において日常生活活動度が減少していた.1年後の日常生活活動度と各期のFCAとSEに相関があったことは,それを更に証明すると考える.また,経時的変化がなかったのは介護予防プログラムによる長期的な介入により,FCA及びSEは維持されることが考えられる.したがって,今後の介護予防プログラムによる長期的な介入では,いかに身体機能及びSEを高め,日常生活活動度を維持・向上させるかが課題となるだろう.【理学療法学研究としての意義】本研究結果により,介護予防プログラムによる長期的な介入において,身体機能だけでなくSEを意識した介入が重要であることが示唆された.これらの結果は今後の予防給付受給者における介入方法の指針として重要な知見と考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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