理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-08
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一般口述発表
高位頸髄損傷者の幻肢痛および幻肢に対するVirtual Visual Feedbackの介入効果
―シングルケースデザインによる検討―
片山 脩壹岐 英正澤 俊二
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抄録
【はじめに、目的】脊髄損傷患者の痛みに関する調査では、65-85%の患者が痛みを経験し、その約3分の1に激しい痛みがあったと報告されている(Siddall.2003)。我々は、第28回東海北陸理学療法学術大会において高位頸髄損傷者の幻肢痛に対する介入方法を検討した。結果として映像に合わせて運動を錯覚させるVirtual Visual Feedback(以下、VVF)の即時効果がみられた。今回は、高位頸髄損傷者の幻肢痛および幻肢に対するVVFの長期的な介入による効果についてシングルケースデザインにて検討したので報告する。【方法】対象は約5年前にC2頸髄損傷完全四肢麻痺と診断された20歳代の男性。ASIA機能障害尺度はA、感覚および運動はC2残存レベルであった。主訴は右肩関節周囲に「もうひとつの右肩が前に飛び出している感じがする」といった幻肢と、しびれを伴う幻肢痛(以下、幻肢痛)であった。研究デザインはシングルケースデザインのABA’型デザインを用いて、B期(12週間)を操作導入期とした。VVFの方法は、起立台75度立位で正面に鏡を設置し、症例の頸部から下が隠れるように鏡にシーツを巻き付け、プロジェクターにて第三者の歩行や両上肢を動かしている頸部から下の映像を10分間流した。口頭指示は「自分があたかも手足を動かしているかのように映像に合わせてイメージをしてください」とした。A期(3週間)、A’期(5週間)は正面に何も設置せず10分間立位をとらせた。介入頻度は各期ともに週3日間とした。効果判定は、幻肢痛の強さを100mmのVisual Analog Scale (以下、VAS)を用いVVF前後に測定した。また幻肢を頭の中で動かす運動イメージ能力としてGreggら(2007)のMovement Imagery Questionnaire-Revised second version (以下、MIQ-RS)を用い、視覚的運動イメージ(以下、視覚MIQ-RS)と筋感覚的運動イメージ(以下、筋感覚MIQ-RS)を7段階で評価した。視覚MIQ-RSは「肩が元の位置へ戻るところをどれくらいイメージできますか」、筋感覚MIQ-RSは「肩が元の位置へ戻る運動の感覚をどれくらいイメージできますか」と質問しVVF前後に評価した。統計学的分析はA期の最後の2週間をベースライン期(以下、BL期)、A’期の最初の2週間を第1フォローアップ期(以下、第1FU期)、A’期の最後の2週間を第2フォローアップ期(以下、第2FU期)とし、幻肢痛のVAS平均値を一元配置分散分析と多重比較を用い比較検討した。また視覚MIQ-RSおよび筋感覚MIQ-RSの中央値はKruskal-Wallis検定を行い、各期の比較にはWilcoxon検定を用い検討しBonferroni法による有意水準の調整を行った。なお、有意水準はすべて5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、対象および家族に研究の趣旨を十分に説明し書面にて同意を得た。【結果】幻肢痛のVAS平均値はBL期71.9±4.6mm、第1FU期41.8±5.6mm、第2FU期43.5±8.1mmでBL期と第1FU期、BL期と第2FU期で有意差を認めた(p<0.01)。視覚MIQ-RSの中央値はBL期2.5、第1FU期3.0、第2FU期3.0でBL期と第1FU期で有意差を認めた(p<0.05)。筋感覚MIQ-RSの中央値はBL期2.0、第1FU期3.0、第2FU期3.0でBL期と第1FU期、BL期と第2FU期で有意差を認めた(p<0.05)。【考察】VAS、視覚MIQ-RS、筋感覚MIQ-RSのいずれもBL期に対し第1FU期で有意な改善を認めたことから高位頸髄損傷者の幻肢痛および幻肢に対するVVFの長期的な介入による効果が示唆された。またVAS、筋感覚MIQ-RSはBL期に対し第2FU期でも有意な改善を認めたことから、VVFの効果は持続することが示唆された。VASが改善した要因として、幻肢の運動イメージ能力の改善が考えられた。幻肢患者を対象とした研究において幻肢を随意に運動することができる患者は幻肢に幻肢痛を伴っておらず、一方、幻肢を随意に運動できなかった患者は幻肢痛を伴っていたとの報告がある(Franz.1998)。また幻肢の随意運動を伴わない幻肢痛患者が幻肢の随意運動を獲得すると同時に幻肢痛が消失したとの報告(Ramachandran.1995)や神経障害性疼痛患者を対象にMirror visual feedbackを行った研究において患側上肢の運動イメージをうまく行えた群の方が運動イメージをうまく行えなかった群に比べ疼痛の改善が大きかったとの報告がみられる(Sumitani.2008)。本症例においても、映像に合わせて運動を錯覚させるVVFにより幻肢の運動イメージ能力が改善し、幻肢を随意に動かすことが可能となってきたことでVASの改善を認めたのではないかと考えた。また、筋感覚MIQ-RSはBL期に対し第2FU期でも有意な改善を認めたことからVASの改善には視覚MIQ-RSよりも筋感覚MIQ-RSの獲得が有効である可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】高位頸髄損傷者の幻肢痛および幻肢に対する介入として、映像に合わせて運動を錯覚させるVVFの長期的な介入による効果および効果の持続が示唆された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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