理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-08
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一般口述発表
脊髄疾患に対するバクロフェン髄注療法のスクリーニング試験の検討
佐々木 貴之植田 尊善
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抄録
【はじめに、目的】痙縮に対する治療法として,バクロフェン髄注療法(ITB療法)がある.当センターではITB療法希望者には,スクリーニング試験を行っている.スクリーニング試験は実際の効果を体験できる有用な検査であり,この検査の結果から手術適応を決定する.しかし,スクリーニング試験を実施しても,手術適応か否かの判断に迷うことが多々ある.今回,平成18年4月から平成24年5月までの間に当センターでスクリーニング試験を行った者の記録をまとめたので報告する.【方法】対象は脊髄由来の痙縮があり,それによるADL能力の低下,もしくは痙縮に伴う痛み・締め付け感などによるQOLの低下がみられたもので,ITB療法を希望し,スクリーニング試験を実施したものである.計42例で,平均年齢は49.3±15.0歳であった.スクリーニング試験とは,50μgの抗痙縮剤(バクロフェン)を腰椎穿刺にて髄腔内に投与し効果をみる試験である.効果は投与後4時間をピークとし,およそ24時間で消失し,その間ITB療法の疑似体験ができる.評価は試験前と投与後4時間付近(最大効果時)に行った.評価項目は,性別,年齢,Frankel分類,血圧,呼吸数,肺活量(VC,TV),Ashworth評点,スパズム評点,痛み,締め付け感(胸・腹部),深部腱反射(膝,足),クローヌス(膝,足)であった.ITB療法の手術に至った群(手術群)と手術に至らなかった群(保存群)に分類した.統計はスクリーニング試験の効果に関して,1)バクロフェン自体の効果判定のため,手術群と保存群の“試験前と最大効果時の比較”,2)手術の可否の判定のため,試験前と最大効果時の“手術群と保存群の比較”を行った.統計は2群間の差の検定を用いて行った.【倫理的配慮、説明と同意】医学研究に関する倫理審査,総合せき損センター倫理委員会の承認を受けた.参加者には本研究の目的および内容を口頭にて十分に説明を実施し,同意を得たものを対象とした.【結果】男女比は36:6.外傷性脊髄損傷32名,脊髄の変性疾患10名,Frankel分類別にみるとFrankelA:9名,B:5名,C:15名,D:13名であった.手術群22例,保存群20例であった.Frankel分類別で手術に至った例は,A:33%,B:100%,C:47%,D:54%であった.1)試験前と最大効果時との比較で,手術群にのみ有意差が認められたのが,呼吸数の減少,痛みの減少であった.保存群のみに有意差が認められた項目はなかった.手術群と保存群の両群に有意差が認められたのが,Ashworth評点,スパズム評点,締め付け感,深部腱反射,クローヌスであった(p<0.05).2)手術群と保存群の比較では,締め付け感が手術群で有意に減少した(p<0.05).【考察】バクロフェン自体の効果判定である試験前と最大効果時の比較では,手術群も保存群もAshworth評点,スパズム,深部腱反射,クローヌスが有意に減少していた.これらは痙縮の強さを評価するものであり,痙縮に対するバクロフェンの効果は十分に認められた.実際,バクロフェン自体は抗痙縮剤として,プラセボ効果のない有用なものであることは先行研究により実証されている.痙縮の評価のみでは,手術の可否を決定する因子とは成り得なかった.呼吸数と痛みは手術群のみに有意に減少していたため,痙縮の他にこれらの評価が重要であると考えられる.手術群と保存群の比較では,締め付け感以外の有意差は認められなかった.実際Ashworth評点が改善されることに目が奪われがちであるが,これらのことから単純に痙縮が弱まるから手術をするのではなく,他の要因も考慮しながら手術の可否を決定しなければならないことが示唆された.特にFrankelDで痙縮が改善されても歩行不能になる例などは十分に適応を考えなければならない.また,FrankelBでは全例が手術となったが,これは他に比べ痙縮が強いことと,運動完全麻痺ということが関係していると考えられる.運動完全麻痺であるため,随意運動能力の低下を考慮する必要がなく,痙縮が改善すればADL向上に直結することが多いためである.臨床の現場では,スクリーニング試験を希望する患者は有用な変化が少ないにも関わらず,期待が先走ってITB療法の手術を希望される方が多い.スクリーニング試験以上の効果は得難いため,試験の結果をありのままみることが重要である.【理学療法学研究としての意義】体内に異物を埋めるという抵抗の強い手術に関して,医療者側と希望者の間に意見の相違が生まれることがある.考察でも述べた通り,希望者は何としてでも苦しみから解放されたいという気持ちが強く,手術を希望されることが多くみられる.スクリーニング試験の段階で医療者側がデータを提示し,より明確なアドバイスができるようにしていくことが大切である.本研究をそこで活かすことができれば幸いであるとともに,更なる有効なデータを探求することが必要であると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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