理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: F-O-01
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一般口述発表
短時間電気刺激が対側圧痛閾値に与える影響
田中 克宜池内 昌彦榎 勇人芥川 知彰室伏 祐介石田 健司谷 俊一
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抄録
【はじめに】 手術後の早期回復を目的としたリハビリテーションを行う際に創部痛は大きな問題となる.疼痛管理法のひとつとして,経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation;TENS)が用いられているが,術創部には電極を貼付しにくいことを多く経験する.また,散見される先行研究でのTENSによる疼痛管理法では,数十分の通電時間を要する.一方,短時間の随意収縮により即時的に反対側までおよぶ圧痛閾値の上昇がみられることも報告されているが,臨床場面では収縮強度を一定にして介入することは困難であり,一定の痛覚閾値の上昇を得られない可能性がある.そこで我々は,一定の筋収縮力を得ることができるTENSの特性を利用し,短時間対側刺激による疼痛管理法を術後早期のリハビリテーションに応用することを考えた.本研究では,健常人に対する圧痛閾値(Pressure Pain Threshold;PPT)を指標に,強度の異なる短時間電気刺激による鎮痛効果を検討した. 【方法】 健常人14名(女性8名,男性6名,平均年齢26.4±5.2歳)を対象とした.TENSは電気刺激治療器(日本光電社製,簡易型刺激装置SEN-5201)を使用し,利き足の腓骨神経を刺激した.刺激強度は刺激を感じ始める強度を感覚レベル,筋収縮が起こり始める強度の1.5倍の強度を運動レベルとし,2種類の刺激を行った.また,刺激強度以外の条件は(刺激時間:30秒,パルス持続時間:500μsec,周波数:10Hz)で一定とした.PPTはデジタル圧痛計(Medoc社製,Algomed)を用いて,刺激側とは対側の前脛骨筋(脛骨粗面より5cm遠位,3cm外側),三角筋(肩峰より5cm遠位)上にて電気刺激前,刺激中にそれぞれ計測した.刺激中のPPTは刺激開始から10秒後に計測した.各刺激での計測は別日で行い,刺激順序はランダムとした.また,刺激前の値を基準とし,2種類の刺激中PPTの変化率を求め,各刺激強度で刺激前と刺激中のPPTを感覚レベルと運動レベルでPPT変化率をそれぞれ比較した.差の検定には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした.【説明と同意】 研究内容を考慮し,研究実施前に研究の安全性を説明し同意の得られた者のみ実施した.研究終了後に本研究の主旨を説明し,匿名化した上でのデータの使用に同意を得た.【結果】 感覚レベルでの刺激前・刺激中のPPTは前脛骨筋で269.6±31.4kPa,267.4±22.9kPaであり,また三角筋では162.1±23.2kPa,173.3±22.5kPaで有意差は認めなかった.また,運動レベルの刺激強度での刺激前・刺激中のPPTは,前脛骨筋で249.6±31.0kPa,331.6±46.4kPaであり,三角筋で145.4±22.3kPa,206.3±30.0kPaで両筋とも刺激中に有意な上昇を認めた.感覚レベル・運動レベルでの刺激中PPT変化率は,前脛骨筋で105.4±7.0%,133.4±9.1%であり,三角筋で110.5±4.8%,149.2±9.8%と両筋とも運動レベルで有意に大きかった.【考察】 運動レベルの刺激において,刺激部位と同髄節レベルである前脛骨筋のみならず,三角筋でも圧痛閾値の上昇がみられたことから,全身性に圧痛閾値を上昇させたことが分かる.このように全身性に圧痛閾値を上昇させたものとして,下行性疼痛抑制系の賦活化が考えられる.今回のような短時間の刺激においては,低強度である感覚レベルの刺激では賦活化されず,高強度である運動レベルでの刺激にて賦活化されたことが示唆される.一方,別の部位に加えた侵害刺激によって本来の痛みが抑制される疼痛理論として広汎性侵害抑制調節(Diffuse Noxious Inhibitory Controls;DNIC)があるが,侵害レベルの刺激でなくても離れた部位に加えた刺激で本来の痛みが抑制されることが報告されている.感覚レベルでの刺激も侵害レベルの刺激ではないが,感覚閾値の強度では抑制されなかったと考えられる.これらのことより,今回のような短時間対側刺激ではある程度の強度が必要であり,感覚レベルよりも運動レベルの刺激強度の方が適当であると考えられる.今後は症例での効果検証を行っていきたい.【理学療法学研究としての意義】 運動レベルTENSによる短時間刺激中の対側PPTが上昇することが明らかとなった.よって,症例での効果検証を行っていくことで,臨床場面においても即時効果の得られる新しい疼痛管理法として術後リハビリテーションへの応用が期待できると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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