理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-20
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ポスター発表
排便いきみ時の下肢筋活動と体圧
中川 詩歩子三沢 育恵諸永 浩平栗田 宜享高橋 俊章
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キーワード: 排便, 下肢筋活動, 体圧
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抄録
【はじめに、目的】 臥位は腹圧をかけにくく,直腸肛門角が鋭角になることから,排便には適さない姿勢である。ところが近年,床上排泄を余儀なくされている高齢者が増加していると報告されている。床上排便への対応として,膝屈曲位で上半身を挙上した姿勢が推奨されている。しかし,腹圧を高めるにはポジショニング以外の介入も同時に行っていく必要があると考え,骨盤後傾位保持のための下肢筋活動に着目した。そこで,本研究の目的は座位および臥位でのいきみ時の下肢筋活動および体圧を明らかにし,床上排便における理学療法介入を検討する基礎資料を得ることである。【方法】 健常成人14名(男性 7名,女性 7名,年齢 20.1 ± 0.5 歳,身長 156.8 ± 29.9 cm,体重 56.1 ± 5.9 kg)を対象に,座位およびリクライニング式ベッドにてベッド角度を0°,30°,60°に設定した背臥位で10秒間のいきみ動作を1分間の休憩をおき3回測定した。その際,表面筋電計(DELSYS社製 TRIGNO WIRELESS EMG SYSTEM)を使用し,外腹斜筋,内腹斜筋,大腿直筋,ハムストリングス,長内転筋,中殿筋,前脛骨筋,腓腹筋外側頭の筋活動を測定した。同時に体圧分布測定装置(Vista Medical 社製Forth Sensitive Applications)を使用し,座位では足部,背臥位では足部および殿部で,各々最大値,平均値,接触面積を測定した。また,測定後にはVisual Analog Scale(VAS)により,座位排便時のいきみ感を基準に各測定肢位におけるいきみやすさを評価した。筋活動量は,測定したMVCよりいきみ時の筋活動量を%MVCで表した。体圧は,最大値,平均値,接触面積の各々の変化率を算出した。変化率の算出は{(いきみ前の値 - いきみ後の値)/いきみ前の値}の式を用いた。統計処理は各測定肢位間における%MVCと体圧の変化率を比較するため一元配置分散分析およびTurkeyを用いた。VASの結果は,χ²検定を用いて各肢位の偏りを比較し,統計ソフトはSPSSver.16を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全ての被験者には事前に本研究の概要を口頭と書面で十分に説明し,書面にて参加の同意を得た。【結果】 体圧の最大値変化率は,座位では足底圧が増加し,背臥位ではベッド角度60°を除き減少した。また,殿部圧はいずれのベッド角度でも減少した。筋活動量は,内腹斜筋は座位に比べ0°において有意に増加し(p<0.01),他のベッド角度においても増加する傾向があった。ハムストリングスは座位に比べ60°での筋活動が減少し(p<0.01),他のベッド角度においても減少する傾向があった。いきみ感の比較は,座位と比較し,いきみにくい,ややいきみにくいという回答が0°では60%,30°では30%,60°では10%であった。【考察】 座位排便では,背臥位でのいきみ動作時に比べ,ハムストリングスの活動量と足底圧が増加していた。先行研究同様,本研究においても腹筋群とハムストリングスの共同収縮により骨盤の後傾が起こっていることが考えられた。また,足部が接地しているため,ハムストリングスが収縮すると等尺性収縮となり,殿部を座面に押しつけるようにはたらき,腹圧を座面にむかってかけやすくなるため,足底圧も増加すると考えた.床上排便の特徴について,背臥位での体圧変化率は,足底,殿部がともに減少することから,その分の体圧は腰背部へ移動していることが考えられた。このことから,この時骨盤は座位同様後傾して固定していると考えた。筋活動は,座位排便時よりも内腹斜筋の筋活動が増加し,ハムストリングスの筋活動が減少する傾向にある。このことから,床上排便では骨盤を後傾位で固定し,腰背部を支持面として内腹斜筋の過剰な活動により腹圧を高めようとしており,内腹斜筋とハムストリングス両方の適度な収縮によって効率的に腹圧をかけることが可能となっていると考えた。以上のことから,足部を固定し,ハムストリングスの等尺性収縮を促すことで背臥位でのいきみが行いやすくなる可能性があると考えられた。【理学療法学研究としての意義】寝たきりの対象者に対し,ハムストリングスの等尺性収縮を誘導することでいきみがおこないやすくなる可能性があることが示唆された。床上排便を余儀なくされた対象者の腹圧上昇のための有効なアプローチに繋がると考えられる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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