理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-21
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ポスター発表
制御型短下肢装具による足関節制御の検証
歩行速度に応じた立脚初期の自動制御について
谷田 惣亮菊池 武士安田 孝志藤川 孝満弘平谷 友隆
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抄録
【はじめに】 我々は,機能性流体であるMR流体を用いたコンパクトなMR流体ブレーキ(MRB)を開発し,これを短下肢装具の足継手に組込むことで制御型短下肢装具(Intelligent-AFO:i-AFO)を作製してきた.このMRBは,足継手として足関節のトルクを制御可能であり,これを歩行の各状態に応じてトルク制御することで歩行改善につながることを確認してきた.実際に,臨床評価により歩行速度に応じた底屈角速度制御によって歩容改善がみられることが明らかになった.しかしながら,この制御方法では事前に歩行速度ごとの制御パラメータを設定する必要があった.そこで今回,歩行速度を推定する方法を考案し,推定された歩行速度に応じて制御パラメータを自動調整する制御方法を構築した.この方法に基づき臨床評価を行い,足関節の自動制御が可能かを検証したので報告する.【方法】 歩行速度に応じた制御実現のため,正確な歩行速度の把握が必要となる.予備実験および先行研究から歩行速度とストライド長との間には直線関係を認めたため,この歩行速度とストライド長の関係式とi-AFOで計測可能な歩行周期を利用し,歩行速度を推定することとした.また,歩行速度と足関節底屈角速度にも直線関係を認めたことから,歩行速度に応じて目標底屈角速度を算出することが可能となる.これらの方法により,歩行中に得られた歩行周期から推定歩行速度を算出し,そこから目標底屈角速度を決定し足関節のトルクを制御した. 制御目的は,(1)立脚初期の初期接地から荷重応答期での底屈制動による急激な足関節底屈の防止と,(2)立脚後期から全遊脚期での足関節の底屈制限による下垂足の防止の2点である.制御方式は,角速度フィードバックによって制御する方式をとった.なお,歩行状態の判別にはi-AFOの角度センサと加速度センサを用いて判別した. 臨床評価における被験者は,ギランバレー症候群の男性で,下肢末梢部の随意運動が困難で足関節は弛緩性麻痺を呈している.歩行速度とストライド長との関係には個人差があるため,まず,Microsoft Kinectセンサを用いて被験者の各歩行速度でのストライド長を計測した.ここで得られたデータから歩行速度とストライド長の関係式を導き出した. 方法は,被験者にトレッドミル歩行を行わせた.トレッドミル速度を1.6km/hから2.5km/hまで0.3km/h間隔でランダムに設定し,この際の推定歩行速度および目標底屈角速度を算出した.なお,これらは歩行が安定した後の20歩分のデータを用いた.また,足関節部の角度センサにより,足関節の底屈角速度および関節角度を経時的に測定した.【倫理的配慮】 同意書をもとに被験者に説明と同意を行い,実験中の転倒等の事故防止のため常時サポートできる体制で実施した.【結果】 トレッドミルでの各設定速度での推定歩行速度と足関節の目標底屈角速度は以下の通りであった.トレッドミルの速度が1.6 km/hの時,推定歩行速度が1.63±0.22 km/h,目標底屈角速度が146.05±17.21deg/sとなり,同様に1.9 km/hの時が1.94±0.35 km/h,175.63±48.82 deg/s,2.2 km/hの時が2.25±0.34 km/h,181.41±20.14 deg/s,2.5 km/hの時が2.55±0.10 km/h,197.67±10.08 deg/sとなった. 立脚初期の底屈角速度の実測値においても目標値よりもやや高値を示したものの,各歩行速度に応じた角速度制御が実現できていた. 足関節角度では各歩行速度で立脚初期の底屈制動が行われていた.また遊脚期においても底屈が制限され,下垂足が防止される結果となり,装具の制御目的が達成された.【考察】 制御において必須情報となる歩行速度については,事前の被験者の歩行計測と歩行中の歩行周期により推定する方法をとったが,推定歩行速度とトレッドミルの設定速度との値は近値となり,自動制御に必要な歩行速度情報を的確に把握することができ,その有効性が実証された.また,歩行速度ごとの目標底屈角速度についても歩行速度に比例した結果となり,実測値においても目標値に近似した制御ができていた. 以上から,歩行速度を実測することなく推定し,その情報をもとに足関節の底屈制御を行うことでより正常に近い歩行の実現が可能になることが示唆された.しかしながら,事前の歩行計測が必要なことやその際の誤差,歩行周期の安定した状況での推定となることなど課題も残された.今後,さらに精度の高い計測方法を考案し,歩行速度に応じた足関節制御を実現したい.【理学療法学研究としての意義】 i-AFOは各歩行状態で足関節トルクを即座に調整可能なことから,歩行機能の向上に有用な装具と考える.今回,歩行速度に応じて自動的に立脚初期の足関節底屈制御が実現できた.これにより,日常生活での様々な歩行速度に見合った足関節制御が自動的に可能になり,より正常に近い歩行支援への一助となるものと考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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