抄録
【はじめに、目的】「COPD診断と治療のためのガイドライン」で推奨される栄養評価項目(生化学検査)には、血清アルブミン(Alb)、rapid turnover proteinなどが挙げられている。安定期のCOPD患者ではAlbによる蛋白代謝異常の検出感度は低いと言われているが、Albは栄養状態の評価に最も汎用されている指標である。筆者らは先の第20回群馬県理学療法士学会にて、Albの改善率とBarthel Index(BI)の改善度の間に有意な正の相関があり、Albの改善率5%がBI改善の1つの目安となるのではないかと示唆されたと報告した。今回、BI改善の目安となるであろうAlb改善率5%を基準にした場合、Albの改善とBIの改善の間に他の因子が影響していないかどうかについて比較検討した。【方法】対象:H23.4月~H24.7月の間に当院を退院し、理学療法を施行していたCOPD患者33名をAlb改善率5%以上群12名(男性11名、女性1名。平均年齢75.8±8.8歳)と5%未満群21名(男性19名、女性2名。平均年齢78.0±6.3歳)の2群に分けた。方法:調査項目は入院期間、リハビリ実施期間、転帰とリハビリ開始時・終了時BI、Albに加えて、カリウム(K)、ヘモグロビン(Hgb)、C反応性蛋白(CRP)、白血球数(WBC)とした。BIはリハビリ終了時-開始時=改善度、Albは改善度/開始時=改善率とした。統計学的解析:SPSS 19.0を使用し、全体のBI改善度・Alb改善率と各項目との関連性をSpearmanの順位相関係数により検証し、2群間の各項目の比較にMann-WhitneyのU検定を用いた。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者に研究の趣旨を説明し同意を得て、個人情報保護の徹底に努めた。【結果】先の報告と同様に、Alb改善率とBI改善度との間に有意な正の相関(r=0.418、p<0.01)が認められた。また、Alb改善率・BI改善度とも終了時WBCとの間に有意な負の相関(r=-0.405、p<0.01)を認めた。2群間の各項目の比較では、BI改善度とAlb改善率を除いて有意差は認められなかった。それぞれの項目の平均(5%以上群/5%未満群)は、BI改善度27.9±27.8/6.0±12.1点(p<0.05)、Alb改善率10.9±6.5/-6.2±11.3%(p<0.01)であった。転帰は自宅退院11/20名、転院0/1名、死亡1/1名であった。【考察】BI改善の目安となるであろうAlb改善率5%を基準に比較した場合、炎症症状の終息を前提としてAlb改善率と BI改善度の間には、生化学検査から得られる他の因子の影響は認められなかった。したがって、COPD患者においてAlbの改善がBIの改善に果たす役割は大きく、現在最も汎用されているAlbによる栄養状態の評価を行うことはBI改善の予測として重要であると示唆される。ただし、Albが改善していながら死亡した例も認められたため、栄養状態の改善がADLの改善に繋がるとは短絡的には言い難く、よりリハビリ効果が高まるといったところであろう。今後、マラスムス型栄養障害が高率なCOPD患者においては、%標準体重や除脂肪体重などの身体計測評価やエネルギー代謝なども含めた関連性を検討していきたいと考えている。【理学療法学研究としての意義】改めてAlb改善率とBI改善度との間に有意な正の相関が認められ、COPD患者においてAlbの改善がBIの改善に果たす役割は大きく、現在最も汎用されている栄養指標であるAlbと照らし合わせてADL(BI)の予測を行っていくことが重要であると示唆された。