抄録
【はじめに、目的】在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:以下HOT)は住み慣れた環境で療養を行いつつ,趣味や生活習慣,社会活動を持続し,生活の質(Quality of Life:以下QOL)を高める医療として,年々慢性閉塞性肺疾患(COPD)を中心にその使用者が増加傾向にある.しかし,HOTについての研究は少なく,臨床では「一生酸素を使用するのは嫌だ.」「酸素を持って歩きたくない.」という意見が聞かれる.そこで今回,HOT使用者の現状をアンケートにて調査し,HOT使用者の満足度に影響を与える因子について検討したので報告する.【方法】対象者は2008年4月より2012年7月までの間に当院の呼吸器内科に入院し,リハビリテーション(以下リハビリ)をして退院時にHOT導入した者.なお,今回は退院時6分間歩行距離(6minute walk distance:以下6MD)の結果が250m以上安定して歩行できる者19名とした.疾患の内訳はCOPD13名,間質性肺炎6名であり平均年齢72.2±5.3歳(62~83歳),性別は男性16名,女性3名であった.アンケート内容はほぼ5択の選択形式とし,HOTを使用した現在の主観的健康感,体調の変化,MRC(Medical Research council)息切れスケール,ADL動作8項目(食事,トイレ,着替え,洗面,入浴,歩行,階段,睡眠),活動範囲,趣味,退院後自主練習継続有無,リハビリ満足度,HOT使用満足度を含めた20項目で構成.HOT使用満足度の結果と他19項目の質問結果の相関を求めた.統計処理にはSPSSを使用しSpearmanの順位相関係数を用いた(α=0.05).【倫理的配慮、説明と同意】回答者を匿名化したアンケート調査について当院の倫理委員会の承認を得て実施した.対象者には本研究の目的について説明し,同意した者のみ返信を頂いた.【結果】HOT使用満足度と中等度の相関があった因子は主観的健康感(r=0.605,p=0.006),趣味(r=0.457,p=0.049),リハビリ満足度(r=0.426,p=0.069)であった.ほか,相関が期待されたが相関が低かった項目は,MRC息切れスケール(r=0.155,p=0.527),活動範囲(r=0.36,p=0.883)であった.【考察】研究結果より,QOLと関連している趣味が継続して出来ていることや身体的,精神的に健康だと感じる事がHOT使用者の満足度に大きく影響していることがわかった.リハビリ満足度は症例数の少なさより中等度の相関は得られたが,今回の研究では有意とはならなかった.しかし,リハビリの介入がHOT使用者の満足度を上げる要因になっていることは示唆された. MRC息切れスケールとの相関が低かった要因は,息切れの状態に関わらずHOT使用者の満足度が高かったこと.同様に活動範囲との相関が低かった要因も,活動範囲の広さに関わらずHOT使用者の満足度が高かったことが考えられた.今回は対象者が,ある程度活動が出来る6MDの結果が250m以上の者である事から,息切れや活動範囲に影響がなかったとも考えられた.【理学療法学研究としての意義】有意水準が高い結果なので今後も研究を続け対象数を増やす必要がある.また,HOT使用満足度がリハビリ満足度と関係性が高い結果より,HOT導入には積極的なリハビリ介入が重要だと思われた.さらに,今後はより効果的なリハビリ内容の検討が必要であると考える.