理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-O-01
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一般口述発表
呼吸介助法の違いが胸腔内圧に与える影響について
山本 健太間瀬 教史木原 一晃野口 知紗松浦 尊麿
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抄録
【はじめに、目的】 呼吸介助法は、胸郭を用手的に圧迫することで深い呼気を促進し、増加した胸郭の弾性拡張力により吸気量の増大を得ようとするものである。呼吸介助法は気道内分泌物の移動や機能的残気量の減少などさまざまな効果が報告されている。一方、最大呼気まで絞り出すような過度な圧迫は胸腔内陽圧を著しく上昇させ、エアートラッピングや肺胞虚脱の原因となる危険性も指摘されている。以前我々は、背臥位での上部胸郭呼吸介助法にて深呼吸と同程度の呼気終末位まで行った場合、深呼吸以上に高い胸腔内圧が生じている可能性があると報告した。今回は、臨床的にも使われる側臥位での呼吸介助法を行った時の胸腔内圧を測定し、呼吸介助法の違いが胸腔内圧に与える影響について検討したので報告する。【方法】 対象(被術者)は健常男性7名(年齢27.3±2.0歳)、呼吸介助を行う術者は呼吸理学療法の経験年数が8年の男性理学療法士1名(年齢29歳)とした。測定肢位、介助方法は、背臥位は上部胸郭介助法、両側の側臥位は下部胸郭介助法を行った。それぞれ2分間の安静呼吸(安静時)を行った後、呼吸介助法(介助時)と深呼吸(深呼吸時)をそれぞれ2分間ランダムに行った。呼吸介助法は、可能な限り最大呼気位まで介助を行うようにした。胸腔内圧は食道バルーン法で食道内圧(Pes)を測定した。食道バルーンは、バルーン(長さ10cm、直径1.2cm)をポリエチレンチューブ(直径2mm)に付けたものを使用した。測定機器は総合肺機能検査システム(チェスト社製 CHESTAC8900)を用いた。肺気量位変化は呼気ガス分析器(ミナト医科学社製AE300-s)を用いて測定した。Pes、肺気量位の経時的変化はサンプリング周波数100HzでPCに取り込み、安静時、深呼吸時、介助時ともに安定した3~5呼吸を抽出した。その後、肺気量位変化から一回換気量(TV)、終末吸気肺気量位(EILV)、終末呼気肺気量位(EELV)を算出した。Pes変化は、安静時、深呼吸時、介助時それぞれの呼気時最大Pes(maxPes)、吸気時最小Pes(minPes)を求めた。EILV、EELVは、各対象者の肺活量に対する比で表した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者及び術者には本研究の趣旨を十分に説明し、同意を得た。また本研究は甲南女子大学倫理員委員会の承認を得ている。【結果】 各肢位の安静時の肺気量の変化は、EILV(背臥位:41.0±8.4%、右側臥位:50.3±8.5%、左側臥位:52.3±8.0%)、EELV(背臥位:30.1±8.1%、右側臥位:40.1±9.4%、左側臥位:42.6±7.7%)ともに両側の側臥位が背臥位に比べ有意(p<0.05)に高かった。一方で安静時の胸腔内圧については、maxPes(背臥位:2.18±2.39cmH2O、右側臥位:-2.45±1.99cmH2O、左側臥位:-4.16±2.03cmH2O)、minPes(背臥位:-0.50±2.37cmH2O、右側臥位:-5.80±2.15cmH2O、左側臥位:-6.95±1.79cmH2O)ともに両側の側臥位が背臥位に比べ有意(p<0.05)に低かった。 介助時の肺気量の変化については、EILV(背臥位:44.1±12.1%、右側臥位:51.4±9.2%、左側臥位:48.7±6.5%)は各肢位間で有意差はなく、EELV(背臥位:14.2±7.4%、右側臥位:27.4±9.6%、左側臥位:26.6±5.1 %)は両側の側臥位が背臥位に比べ有意(p<0.05)に高かった。TV(背臥位:1.58±0.62ℓ、右側臥位:1.24±0.31ℓ、左側臥位1.17±0.36ℓ)は各肢位間で有意差はみられなかった。胸腔内圧については、maxPes(背臥位:9.63±4.13cmH2O、右側臥位:-0.03±2.79cmH2O、左側臥位:-0.87±2.91cmH2O)、minPes(背臥位:-1.21±3.67cmH2O、右側臥位:-6.62±2.81cmH2O、左側臥位:-7.52±2.78cmH2O)はともに両側の側臥位が背臥位に比べ有意(p<0.05)に低かった。【考察】 今回の結果から、側臥位での呼吸介助時は背臥位での呼吸介助時に比べ呼気終末位での胸腔内圧は低く、呼気時の肺気量位も側臥位は背臥位での呼吸介助時に比べ低いことがわかった。このことから、介助時の肺気量位が低く、胸腔内圧が陽圧を示す背臥位に比べ、側臥位での呼吸介助は呼吸終末でも胸腔内圧の陰圧が維持され、気道および肺胞の虚脱が生じにくい肢位であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 呼吸介助法の違いが胸腔内圧に与える影響について知ることで、呼吸介助法の効果的な手技の判明につながると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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