理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-40
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ポスター発表
腰椎前弯の有無による股関節自動伸展における運動軸位置の検討
瞬間中心に着目して
西村 圭二南部 利明北村 淳後藤 公志杉本 正幸山﨑 敦
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抄録
【はじめに】臨床上,変形性股関節症(以下股OA)患者の歩行では立脚中期から後期にかけて股関節伸展に伴う腰椎前弯の増強を認める場合があることを経験する。この原因として,股関節伸展可動域の制限,殿筋の筋力低下,コア(腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋)の機能低下が挙げられる。先行研究では股OAによる腰椎前弯姿勢患者では,腹臥位での股関節伸展の際に脊柱起立筋優位となるとされる。そこで,歩行時の腰椎前弯による代償を軽減するために,腹臥位での股関節伸展における運動軸位置について瞬間中心に着目し検討したので報告する。 【方法】股関節疾患のない健常成人8名(平均年齢31.1±6.1歳,身長171.5±4.6cm)を対象に,通常の股関節自動伸展と腰椎前弯を減少させた状態での股関節自動伸展の瞬間中心(運動軸)を計測した。あらかじめ日本整形外科学会が定める改訂関節可動域表示ならびに測定法に準じて両側の股関節伸展可動域を他動にて測定し,参考可動域を有しており(20.0±4.5°),徒手筋力検査では大殿筋の筋力がNormal(5)である者とした。計測肢位は,大腿外側部にマーカーを任意に2個と大転子の頭側に1個取り付けた腹臥位とし,通常の股関節自動伸展と腹部下にバスタオルを挿入し腰椎前弯を減少させた状態(以下タオル挿入時)での股関節自動伸展を各々実施し,デジタルビデオカメラ(SONY社製)にて側方から撮影した。計測前に3回練習を行った。同様の計測を片側股OAによる人工股関節全置換術後3週目患者1名(以下症例1)と片側股関節唇損傷術後8週目患者1名(以下症例2)にも実施した。撮影動画より,股関節自動伸展における瞬間中心を求めた。2個のマーカーの各々の始点と終点を結ぶ線の垂直二等分線が交差する点をDartFish Software(ダートフィッシュジャパン)にてパソコン上で求め,大転子の頭側のマーカー(解剖学的な股関節運動軸)と瞬間中心との距離を比較した。距離は座標として左右方向(X)と上下方向(Y)を絶対値として算出した。統計処理は対応のあるt検定を用い,危険率5%未満とした。【説明と同意】厚生労働省が定める「医療,介護関係事業における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン」に基づき,対象者に本研究の趣旨を書面にて十分に説明し同意を得た。【結果】健常成人ではXの距離は通常14.5±7.1cm,タオル挿入時15.7±8.2cmと増加を認めた。Yの距離は通常2.6±2.2cm,タオル挿入時2.0±1.7cmと減少していた。X,Yとも有意差は認めなかった。症例1は股関節他動伸展可動域が左右とも17°,MMTは5であり,患側ではタオル挿入により距離の減少は認めたが健側よりも頭側上方に位置していた。症例2は股関節他動伸展可動域が健側21°患側12°,MMT健側5患側4であり,健側ではタオル挿入時に距離の減少を認めたが,患側では通常よりもタオル挿入時において頭側に位置していた。【考察】股関節伸展可動域や大殿筋の筋力が正常であっても,通常の股関節自動伸展における運動軸は解剖学的な股関節運動軸よりも頭側に位置することが本研究にて明らかとなった。先行研究により腰椎後弯,骨盤後傾位での股関節伸展運動では脊柱起立筋よりも大殿筋の活動が優位となることから,運動軸は股関節付近に位置すると予想したが,有意な差は認めなかった。これはタオルの挿入により腰椎前弯が減少するとともに骨盤は後傾するため股関節は通常よりも伸展位となる。伸展位からさらに股関節を単独伸展するため,代償として対側股関節屈曲やタオルによる制約以上に腰椎前弯が生じたと考える。また,股関節自動伸展角度を任意としたことも要因であることが示唆される。症例1は可動域,筋力は正常範囲であるが,術後3週のため上記の要因とともに術前の運動軸に依存する傾向が残存していると推察する。また症例2は可動域,筋力の制限が影響していると考える。よって,歩容改善のトレーニングとして,可動域および筋力の獲得は当然であるが,股関節自動伸展は代償を可能な限り抑制した状態で行う必要があることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】股関節疾患は不良姿勢を伴うことが多く,手術を施行しても術前の歩行パターンを改善するのに時間を要する。特に,腰椎前弯型の股OAでは人工股関節全置換術後に疼痛や可動域,筋力は改善しても立脚中期から後期にかけての股関節伸展を腰椎前弯にて代償する症例を臨床上経験する。つまり,歩行における股関節伸展の運動軸が腰椎部に偏位していることが示唆される。腰椎前弯による代償を抑制する方法として腹臥位でタオルを腹部下に挿入することが股関節単独伸展を促すためには有効とされるが,股関節運動軸を解剖学的位置に近付けるには,ただ前弯を減少させるだけでなく運動時に生じる代償を詳細に評価し正確な股関節伸展を行うことが重要であると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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