理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-35
会議情報

ポスター発表
人工股関節全置換術(THA)による手術侵襲がバランス能力に与える影響
-両側一期的THAと一側THAの比較-
坪内 優太川上 健二松本 裕美井上 仁兒玉 慶司兒玉 吏弘木許 かんな原田 太樹片岡 晶志津村 弘
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キーワード: THA, 固有受容器, バランス
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抄録
【はじめに、目的】進行期・末期の変形性股関節症(以下股OA)の場合、人工股関節全置換術(以下THA)の適応となる。当院では後外側アプローチ(以下PL)を行っており、術中に後方関節包や外旋筋群の切離が必要とされる。そのため、関節安定性及び固有受容器の機能低下が予測され、バランス能力に影響を与えることが考えられる。また、当院では近年、両側罹患例で心疾患等の合併症がなく、比較的年齢が若い(75歳以下)患者に対し両側一期的THAを実施している。入院期間の短縮や手術の負担軽減を図り、可及的早期に社会復帰することを目的としている。我々の研究でも、両側一期例の術後理学療法の経過は一側例との有意差を認めず、両側二期例に比べ負担の軽減に繋がる可能性があることがわかっている。しかし、手術侵襲が2倍となることから、術後の機能低下が大きくなり、その後の回復率にも影響を与えることが予測される。本研究では、PLでのTHAがバランス能力に与える影響を両側一期例と一側例の比較を含めて検討することで、明らかにすることを目的としている。【方法】2010年10月より2012年10月までに当院整形外科で股OAに対して初回THAを行った、 他の整形外科疾患を有さない患者35例44股(男性6例、女性29例)を対象とした。その内、両側一期的THA施行群(以下両側群)が9例18股(男性4例、女性5例)、一側THA施行群(以下一側群)が26例26股(男性2例、女性24例)、平均年齢は全例で62.2±8.0歳、両側群 59.0±7.7歳、一側群 63.3±7.9歳、平均在院日数は全例で21.7±3.7日、両側群23.1±4.6日、一側群21.1±3.3日であった。尚、年齢や在院日数において両群間に有意差は認めなかった。手術の展開方法は全例ともPLであった。評価項目として重心動揺、10m歩行、Timed up & go(以下TUG)の計測を術前と術後1週、退院時に行った。重心動揺測定は、ANIMA社製重心動揺測定装置を使用した。被験者は開眼で両脚を平行に開いた状態で測定プレート上に起立し、安静時立位保持を30秒間行った。測定項目は総軌跡長(以下LNG)、単位面積軌跡長(以下LNG/E.AREA)の2項目である。統計学的処理は統計ソフトSPSS19.0.0を使用した。統計手法は各時期間の分析で対応のあるt検定、各時期における両群間の分析ではMann-whitney U検定を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には口頭にて研究の趣旨を説明し、調査・測定したデータを研究に使用する同意を得た。【結果】THA全例のLNG/E.AREAは術後、退院時の値が術前より有意な低下を示した(p<0.05)。両側群ではLNG/E.AREAとTUGにおいて術後に有意な低下を示した(p<0.01)。その他の項目に関しては、各群において各時期間の有意差を認めなかった。また、両側群と一側群の比較では、術後のLNG/E.AREAで両側群に有意な低下を認めた(p<0.01)が、その他の項目では2群間に有意差を認めなかった。【考察】今回、重心動揺の結果より、PLのTHAでは術後の静的バランス能力の低下が示された。さらに両側群では、TUGの結果から術後の動的バランス能力も低下することが示され、LNG/E.AREAも一側群との有意差を認めた。固有受容器は、姿勢制御のため体幹深部筋や四肢近位筋で単位運動あたりの割合が多いとされている。また、股関節の関節包には豊富な知覚神経が存在する。これらは静的及び動的な安定性に重要な役割があるとされている。PLでは外旋筋群を一度切離し、その後大転子に縫合する必要がある。外旋筋群は近位筋であり、レバーアームも短いことから、関節運動よりもむしろ関節の安定性に関与すると思われる。特に内外閉鎖筋は起始側の筋腹が約1cmと厚みもあり、その機能は重要である。THA患者では手術侵襲による外旋筋群の機能低下が股関節の不安定化を招き、静的・動的バランス能力の低下をきたしたのではないかと考える。両側群では手術侵襲が2倍となることにより、筋や関節包の固有受容器の機能低下が大きくなり、TUGの結果に反映されたと考える。反対に10m歩行では、リズミカルで重心移動が小さいことから、固有受容器のフィードバックの必要性も少なくなり、手術侵襲による影響を受けにくいのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】PLでのTHAの手術侵襲が術後バランス能力の低下に繋がることが示された。両側一期的THA患者はADL動作等の応用動作の改善に時間を有する可能性など、THA術後患者の理学療法プログラム立案の一助になると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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