理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-O-04
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一般口述発表
同種造血幹細胞移植後の下肢筋力とEBMTリスクスコアの関連についての検討
木口 大輔名和 由一郎中瀬 浩一田内 秀樹鴻上 繁
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抄録
【目的】同種造血幹細胞移植では移植後の身体機能低下を認め,特に下肢筋力低下により日常生活動作に支障を来たすことはしばしば経験される.今回我々は,造血幹細胞移植前の予後予測に有用であることが報告されているEBMT(European Group for Blood and Marrow Transplantation)リスクスコアと同種造血幹細胞移植後の下肢筋力との関連ついて検討したので報告する.【方法】対象は同種造血幹細胞移植を施行し移植後100日目に下肢筋力評価を実施した44例とした.対象は入院期間中に下肢筋力トレーニング等の理学療法を実施し,下肢筋力評価は,三菱電機エンジニアリング社製Strength Ergo 240(アイソキネティックモード,ペダル回転速度50r/min,測定回数5回)を用いて最大脚伸展トルク値を測定した.統計解析は,移植後100日目の下肢筋力とEBMTリスクスコアおよび5項目のリスク因子(年齢,病期,発症から移植までの期間,ドナーの種類,ドナーと患者の性別の組合せ)について検討するためにMann-WhitneyのU検定を行った.さらに下肢筋力低下の有無を従属変数,EBMTリスクスコアの5項目のリスク因子を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析(尤度比検定による変数増加法)を行った.なお下肢筋力低下の有無は,筋力の性差による影響を考慮し性別毎に中央値を用いて分類した.有意水準は5%で有意差ありと判定した.【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言および臨床研究に関する倫理指針に従って実施した.データは個人情報保護に十分に注意し,診療録より後方視的に調査した.【結果】対象の移植時年齢は25-64歳(中央値46歳),性別は男性25例,女性19例,移植細胞源は血縁者11例,非血縁者33例,移植前処置はフル移植22例,ミニ移植22例であった.移植後100日目の下肢筋力は,EBMTリスクスコア低スコア群(0~3点)に比べ高スコア群(4~7点)で有意に低下していた(1.7±0.6Nm/kg vs. 1.3±0.4Nm/kg, p=0.025).5項目のリスク因子では,発症から移植までの期間が12ヶ月未満群に比べ12ヶ月以上群で有意に低下し(1.6±0.6Nm/kg vs. 1.2±0.4Nm/kg, p=0.023),ドナーの種類は血縁者群に比べ非血縁群で有意に低下していた(2.0±0.5Nm/kg vs. 1.3±0.5Nm/kg, p=0.001).しかし,年齢,病期,ドナーと患者の性別の組合せでは有意な差を認めなかった.多重ロジスティック回帰分析では,下肢筋力低下の有無に影響する変数として,発症から移植までの期間(オッズ比17.0, CI1.8-166.2, p=0.015),ドナーの種類(オッズ比15.0, CI1.5-154.3, p=0.022)が選択され,Hosmer-Lemeshow検定はp=0.537,判別的中率は68.2%であった.【考察】近年,造血幹細胞移植患者に対する理学療法は,運動機能およびquality of Lifeを維持・改善することが欧米で報告され推奨されてきている.今回の研究では,EBMTリスクスコアが高スコアの場合には,移植後の下肢筋力の低下を認め,発症から移植までの期間,ドナーの種類のリスク因子が影響を及ぼしている可能性が示唆された.よって我々は,EBMTリスクスコアの高い症例は,移植前からの下肢筋力低下の予防が重要であると考え,より早期からの理学療法の導入を開始した.今後はその効果について検討していく予定である.【理学療法学研究としての意義】今後,造血器腫瘍患者に対する同種造血幹細胞移植の適応は拡大し患者数も増加してくると予測される.したがって患者の運動機能を低下させることなくquality of Lifeの維持・改善のためにも理学療法は必要であり,本研究は理学療法学研究として重要であると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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