理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-S-02
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セレクション口述発表
中高年地域住民に対する半年間の運動・栄養指導が心臓足首血管指数(CAVI)に及ぼす効果
赤井 雅享小野 くみ子松本 大輔瓜谷 大輔傳 秋光
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抄録
【はじめに、目的】厚生労働省の平成23年人口動態統計では死亡率の第2位は心疾患,第4位は脳血管疾患,と動脈硬化性疾患が上位にある.測定機器による動脈硬化指標としては一般に上腕足首脈波伝播速度(baPWV)が用いられてきたが,比較的に血圧の影響を受けるという問題点がある.2004年,動脈硬化の新しい指標として,血圧の影響が極めて少ない心臓足首血管指数(Cardio-Ankle Vascular Index:以下CAVI)が開発された.このCAVI基準値としては8.0未満が正常範囲,8.0以上9.0未満が境界域,9.0以上が動脈硬化の疑いがあるとされている.研究面では健常群でもCAVI値は加齢に伴い上昇するが,60歳前後のCAVI高値者では運動指導で改善するとの報告がある.しかし,運動がCAVI値に及ぼす効果を年齢層別に検討した報告はみられない.本研究は,中高年地域住民を対象とした運動・栄養指導がCAVI値に及ぼす効果を年齢層別に明らかにし,同時に血圧,身体組成,握力,膝伸展筋力,歩数との関連を検討することを目的とした.【方法】対象者は奈良県の地域住民で,役場後援の体力測定会に参加し運動習慣の有無のアンケート調査にも協力が得られた女性104名とした.そのうち運動習慣がある者を除外した63名(63.9±5.1歳)のデータ解析を行った.運動・栄養指導を行っていない者を対照群,p行った者を介入群,55~64歳を中年群,65~74歳を高齢群,CAVI値が8.0未満の者を正常者,8.0以上の者を高値者とした.介入は運動指導と栄養指導を月に2回,6ヶ月間行った.測定項目は身長,体重,BMI,腹囲,CAVI,血圧,体脂肪率,握力,膝伸展筋力,歩数とした.測定は対照群,介入群とも開始時と6ヶ月後の計2回とした.統計学的解析として,CAVI値に及ぼす介入効果は期間(6カ月間)と介入(有無)の因子で2元配置分散分析,中高年群CAVI高値者の介入前後の比較はウィルコクソンの符号順位和検定,歩数の中年群と高齢群の群間比較はマンホイットニーのU検定を使用した.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者には,事前に研究の主旨について説明した後,書面への署名によって同意を得た.なお,本研究は畿央大学研究倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】今回検討したグループは,中年群では対照群のうち,CAVI正常者は9名(58.1±2.5歳),CAVI高値者は8名(61.6±2.4歳)であり,介入群のうち,CAVI正常者は9名(60.3±2.9歳),CAVI高値者は10名(60.5±2.4歳)であった.一方,p高齢群では対照群のうち,CAVI正常者は7名(68.1±1.6歳),CAVI高値者は7名(70.0±1.9歳)であり,介入群のうち,CAVI正常者は5名(69.4±3.2歳),CAVI高値者は8名(68.5±3.1歳)であった.CAVI値に及ぼす介入効果は中年群のCAVI正常者や高齢群のCAVI正常者ならびにCAVI高値者では認められず,中年群CAVI高値者だけ交互作用があり6ヶ月の介入によってCAVI値が有意に減少した.中年群の介入群のCAVI高値者では,握力体重比が49.1±8.5%から51.8±9.6%に,拡張期血圧が87.7±8.3pmmHgから84.3±6.9mmHgに,CAVI値が8.8±0.4から7.5±1.3に有意な改善が認められた.高齢群の介入群のCAVI高値者では体重が53.4±9.4kgから51.6±9.5kgに,BMIが23.9±3.1から23.1±3.3に,腹囲が88.3±12.1cmから83.7±11.6cmに,体脂肪率が33.2±7.6%から31.1±7.7%に有意な改善が認められた.しかし歩数はこれら中年群,高齢群ともに有意な増減は認められず,1日平均8000歩以上であった.また,前後の歩数そのものを中年群と高齢群で比較しても有意差は認められなかった.【考察】中年群,高齢群ともに同程度の歩数であったにも関わらず,中年群のCAVI高値者では先行研究と同様、介入効果を認めたが,高齢群ではCAVI正常者と高値者の両者ともに介入効果を認めなかった.このことは,高齢者では中年者に比べて動脈硬化が退縮されにくいためと考えられた.アンケート調査では運動習慣はないと判断された被験者ではあったが,歩数計を装着した時点で1日平均8000歩以上の歩行運動が記録されたことは,この被験者達はTranstheoretical modelの関心期にあった集団のためと考えられた.当初は運動習慣のないCAVI高値者であっても1日8000歩以上の歩行を6ヶ月間継続した場合,中年群では身体組成の改善がなくても循環動態(CAVI,拡張期血圧)と握力は改善しうること,高齢者では循環動態(CAVI,血圧)は改善しなくても身体組成(体重,BMI,腹囲,体脂肪率)は改善しうることが示唆された.なお,特に身体組成に関しては,食事面からの検討も必要と考えられた. 【理学療法学研究としての意義】運動や栄養指導で中年者では動脈硬化の改善が期待できるが高齢者では改善が困難であること,動脈硬化の改善あるいは遅延を期待するためには可能な限り早期からの介入が必要であることが示唆された.高齢者でも身体組成の改善は期待できることが示唆された.
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© 2013 日本理学療法士協会
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