理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-20
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ポスター発表
足踏み運動中の床外乱刺激に対する筋電図反応時間分析
星 文彦菊本 東陽鈴木 陽介伊藤 俊一
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抄録
【はじめに、目的】高齢者、特に認知症患者における徘徊中の転倒は、探索活動や周囲への注意の転移に伴う身体活動への注意機能の低下が要因と考えられている。中枢神経系の情報処理機能評価のパラメータとして反応時間計測や実際の歩行などの機能的視点からの検討が行われている。本研究の目的は、足踏み運動中の姿勢応答機構への認知機能の関与および筋電図反応時間標準値を検討すること。具体的実験目的は、健常成人を対象に足踏み運動中に床面をアトランダムに前後方向へ水平移動及び傾斜させ、その時の姿勢応答を足関節姿勢応答筋である左右の前脛骨筋から表面筋電図を記録し、水平移動及び傾斜開始から筋活動開始までの潜時として筋電図反応時間(RT)を計測することである。【方法】被験者は、本学学生健常男子16 名、平均年齢20.8 歳、平均身長170.6cm、平均体重62.4cmとした。対象課題は、通常の足踏み運動と認知活動足踏み運動の二課題である。認知活動足踏み運動課題は、足踏みをしながら暗算計算課題を口答で行うものである。床外乱は、立位バランス解析装置「EQUITEST」(NEUROCOM社)を使用し、前後方向への水平移動および傾斜を予告なくアトランダムに刺激した。外乱刺激に対する筋電図反応時間の計測は、「基礎医学研究用システムLEG1000」(日本光電社)を使用した。筋活動は左右の前脛骨筋から表面筋電図用電極はVitrode(日本光電社)を使用し導出した。床外乱刺激開始と足踏み運動、および筋電図は、稼動する床面に3 次元加速度センサー(Crossbow社製)を改良設置(自作、イリスコ社支援)し、また被験者の靴裏にフットスイッチ(自作、イリスコ社支援)を貼付し、ポリグラフ上で同期した。筋電図反応時間の計測は、PCディスプレー上で外乱前の定常足踏み運動中の活動を基準に筋の活動開始を目視で確認した。筋反応時間データは、水平前方移動と後方傾斜に対する筋反応時間を抽出した。なお、転倒時の安全を考慮し検者が後方へ位置し同時に腰部にスリング等を装着し転倒に備えた。データ集積は、各実験課題10 試行し平均化した。統計処理はエクセル統計ソフトを用いt検定により有意水準5%で処理した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は本大学倫理委員会の承認の下、各被験者には研究の詳細を書面及び口頭で説明し書面にて同意を得た。【結果】(1)前脛骨筋反応時間について 足踏み条件における水平移動時の平均RTは116.8msec、傾斜時は148.1msecで有意差が認められた。足踏み+計算条件における水平移動時の平均RTは128.2msec、傾斜時は158.9msecで、それぞれ足踏み条件に対して有意差が認められた。(2)反応時間の変動性について 各条件下でのRTの変動係数の平均値は、水平移動足踏み8.2%、水平移動足踏み+計算8.7%、傾斜足踏み10.4%、傾斜足踏み+計算14.2%で、傾斜足踏み+計算と他の条件間で有意差が認められた。【考察】静止立位における床水平外乱潜時は90msec前後とされ、歩行中の水平外乱応答潜時をTangらは90-140msecと報告している。足踏み+計算条件における水平移動時の平均RTは128.2msec、傾斜時は158.9msecで、それぞれ足踏みのみ条件に対して有意差が認められた。足踏みという意図的不安定条件が加わることにより認知課題が注意の分配という観点から姿勢応答及び情報処理メカニズムに大きく影響を与えていることが示唆された。RTの変動性(CV)については、水平刺激に比べ傾斜刺激におけるRTの変動性が高い傾向が認められた。特に傾斜刺激における足踏み+計算条件において有意に変動性が高い結果となった。傾斜刺激に対する前脛骨筋の応答潜時は、140msec以上かかっており随意運動との関連性が示唆され、多様な感覚入力に対する情報処理のメカニズムが関連していると考えられる。Sheridanらは、Alzheimer病の患者を対象に歩行中に計算負荷を与えた場合に歩行パターン(stride time)のばらつきが高くなると報告している。二重課題による注意配分の影響に関するパラメータとして変動性の計測の有用性が示唆された。【結論】足踏みのみと足踏み+計算の2 条件で床外乱刺激に対する前脛骨筋の姿勢応答反応時間を計測した。足踏み中の外乱刺激に対する姿勢応答が認知課題の負荷により影響を受けることが示唆された。二重課題の注意分配への影響に関するパラメータとして変動性の有用性も伺われた。【理学療法学研究としての意義】高齢者及び中枢神経疾患におけるバランス評価と治療に対する情報処理からのアプローチの基礎資料を提供する。
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© 2013 日本理学療法士協会
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