理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-O-06
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一般口述発表
回復期脳血管障害患者における肺炎発症要因について
―多施設間共同研究による検討―
松村 拓郎沖 侑大郎三谷 有司瀧澤 弥恵成田 雅松川 桂子松田 泰樹石川 朗
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抄録
【はじめに、目的】 肺炎は高齢者の死因の第1位であり、全死因においても2011年に脳血管障害を抜き第3位となった。脳血管障害患者においてはその1/3が誤嚥性肺炎を発症するとされ、脳血管障害患者の肺炎発症によるリハビリテーションの遅延や在院日数の延長、死亡率の増加も報告されている。誤嚥性肺炎に対する予防的介入としては口腔ケアと摂食嚥下リハビリテーションが挙げられるが、その予防効果は十分ではなく、脳血管障害患者の肺炎発症リスク因子の特定は新たな介入法の検討につながると考えられる。しかし、脳血管障害後の肺炎発症は急性期・慢性期の双方でその危険性が指摘されているにもかかわらず、回復期施設での肺炎発症についての報告は少なく、多施設間で行われた研究はみられない。本研究では回復期4施設において後方視的に多角的な視点から脳血管障害患者の肺炎発症リスク因子について検討した。【方法】 対象は2008年4~6月、2009年4~5月の間に脳血管障害の診断で回復期4施設に新規入院した175名(平均年齢72.0±11.0歳、男性106名、女性69名)とした。調査項目は肺炎発症の有無、年齢、原疾患、既往歴、上肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS)、下肢BRS、Japan Coma Scale(JCS)、Functional Independence Measure(FIM)、アルブミン値、総タンパク、活動レベル、経口摂取の有無、嚥下障害の有無、嚥下障害の重症度、人工呼吸器の有無、在院日数、転帰先の17項目とし、それぞれ入院時、またはその近似値を診療録から後方視的に調査した。肺炎の診断は日本呼吸器学会が定める肺炎の重症度分類に該当する所見とX線写真判定により肺炎発症と判断したものとした。統計解析はMann-WhitneyのU検定、カイ二乗検定を用いて肺炎発症の有無と各調査項目の関連について検討した。さらに、関連のみられた項目については肺炎発症の有無をアウトカム、年齢、嚥下障害の有無を調整変数としてロジスティック回帰分析を行い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(95%CI)を計算した(有意水準は5%未満)。【倫理的配慮、説明と同意】 各施設に研究報告書を送付し趣旨を説明の上、個人が特定されないことを条件に各施設の倫理委員会の承認を得た。【結果】 肺炎発生率は175名中13名(7.4%)であった。肺炎の有無と各調査項目では、年齢、嚥下障害の有無と重症度、下肢BRS、経口摂取の有無、FIM、アルブミン値、活動レベル、脳血管障害・呼吸器疾患・心疾患既往歴に相関がみられた(p<0.05)。最も相関が強かったのは入院時の活動レベルで、臥床群と車椅子・歩行群の2群に分類しての臥床群の割合は肺炎群で38.5%、非肺炎群で8.8%であった(p<0.001)。ロジスティック回帰モデルでは入院時の活動レベル(OR=5.4[1.3-21.5])、経口摂取の有無(OR=5.4[1.3-22.8])、アルブミン値(OR=0.1[0.01-0.5])、心疾患既往歴(OR=3.9[1.1-13.7])、呼吸器疾患既往歴(OR=4.5[1.2-16.3])、脳血管障害既往歴(OR=3.7[1.1-12.4])に関連がみられた(p<0.05)。【考察】 複数の併存疾患は患者の虚弱による免疫機能の低下を招き、活動レベルの低下は臥床による免疫機能、粘膜線毛クリアランス、消化器機能、食欲の低下を引き起こす。食欲の低下は低栄養状態により易感染性を増強する。Langmoreらは誤嚥性肺炎発症の機序を口腔内細菌叢、誤嚥、宿主の抵抗の3つに分類しており、今回関連がみられた低活動レベル、低アルブミン値、心疾患・呼吸器疾患・脳血管障害既往歴は宿主の虚弱による抵抗能力の低下を示していると考えられた。嚥下機能が正常な高齢者にも睡眠時の誤嚥はみられることから、免疫機能の維持による誤嚥しても肺炎に罹患しにくい身体作りは重要であると考えられ、本研究から活動量や栄養状態の維持による宿主の免疫機能の維持の重要性が示唆された。今後は口腔内細菌叢の存在や口腔ケアの実施の程度も考慮するとともに、活動量や栄養状態の変化を経時的に調査し、これらの項目が肺炎合併に与える影響についてより詳細に検討していく必要があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 低活動や低栄養による免疫機能の低下は誤嚥性肺炎の発症リスクを高めると考えられ、誤嚥性肺炎の効果的な予防のためには口腔ケア、摂食嚥下リハビリテーションだけでは不十分な可能性がある。本研究での介入可能なリスク因子の特定は今後の前向き研究での新たな予防的介入の足掛かりとなる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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