理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-O-04
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一般口述発表
重心動揺計を使用した理学療法技術の評価
松岡 雅一大工谷 新一藤波 良嗣
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抄録
【はじめに,目的】近年,臨床現場においては,新人理学療法士の急増や365日のリハビリテーション提供体制の導入に伴う勤務体系の変化などによって職員教育に費やす時間が減少してきている.一方,理学療法技術を客観的に評価することは難しく,職員教育においては指導する側の理学療法士個人の経験や主観により実施されていることが多い。したがって,卒後教育において理学療法技術を客観的に評価,指導する方法の確立が望まれる.そこで今回,理学療法技術の客観的な評価方法を確立していく前段階として,立位で荷重を他動的に左右方向へ誘導するという技術について,重心動揺計を用いた検討を行い理学療法士の経験年数による差についても併せて検討した.【方法】対象は理学療法士18名とした.被験者の平均年齢は25.9±3.4(23-36)歳で,理学療法士免許取得後の平均年数は2.4±1.6(1-7)年であった.被験者を免許取得後年数に基づき6名ずつの3群(A・B・C群)に分けた.各群の平均年齢と免許取得後年数はA群では順に26.0±3.8歳,1年目のみ,同様にB群では24.5±0.8歳,2年目のみ,C群では27.2±4.4歳,4.2±1.5(3-7)年であった.各被験者に重心動揺計(ユニメック社製)の上で立位をとらせた健常者1名(34歳男性)に対して左右交互への荷重を誘導させた.具体的には,後方から両手で骨盤を両側から把持して1分間の他動的な誘導をおこなわせた.誘導の順序は,安静立位で正中位を開始肢位とし,右,正中位,左,正中位の順で実施させた.なお,誘導の際には一側下肢に各々最も荷重が加わるように指示した.この他動的な荷重誘導時の力学的様相を独自に開発したソフトを用いて3次元的に解析した.具体的には,誘導時に重心動揺計から得られる足圧中心,床反力,加速度のデータをもとに,荷重を誘導した際に生じる身体位置情報の変化をX(左右方向)・Y(前後方向)・Z(上下方向)の3つの数値として算出し,各々の被験者ごとの最大値の平均値と変動係数を算出した.また、各平均値の群間比較をTukey法による多重比較にて行った.なお,有意水準は5%未満とした.さらに,モデルの自動運動による左右方向への荷重移動の値も算出し,各群の結果と比較した.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,筆者の所属先の職員教育の一環として実施したものであり、就業規則に準拠したものである.また,被験者およびモデルに対しては研究の趣旨を説明したうえで同意を得た.【結果】X,Y,ZのすべてにおいてA群,B群と比較してC群では有意に低値を示した.特にA,B群ではXの値が大きい傾向を呈した.変動係数は3群ともにZにおいて高値を呈した.モデルの自動運動データとの比較ではXは3群すべてで高値を呈し,Y,Zでは大きな差は認められなかった.【考察】立位で荷重を他動的に左右方向へ誘導するという技術を免許取得後年数により客観的に評価することを試みたところ,X,Y,Zのすべてにおいて免許取得後年数が長い群で有意に低値を示し,自動運動による結果と近い様相を呈した.変動係数の分析からは3群すべてでZのみ高値を呈していた.以上のことから,本研究の結果として以下のことが示唆された.1. 免許取得後年数が短い群よりも長い群の方が健常者のパターンに類似した荷重誘導ができること.2. 左右方向の誘導については免許取得後年数に関わらず健常者のパターンよりも大きく誘導していること.3. 上下方向については,免許取得後年数に関わらずバラツキが多いこと.この結果から,理学療法士の免許取得後年数によって,立位で側方に荷重を誘導するというような比較的簡単な技術にも差があることが明らかとなった.左右方向への誘導がすべての群で大きくなったのは,左右への誘導が今回の課題そのものであったために健常者のパターンよりも強調しすぎた可能性があると考えられた.一方,上下方向では床面に対して一側下肢へどのように荷重を加えるかなどについての一定した正常パターンや理学療法士間での共通認識がなく,経験則によって実施されている可能性があると考えられた.さらに,本研究の方法をもとに立位での荷重誘導の様相を数値化できれば客観的な比較が可能となり,その結果をもとに理学療法技術の伝達や教育に使用することが可能になると考えられる. 【理学療法学研究としての意義】本研究を応用することで,客観的に示すことが難しい理学療法技術を一部ではあるが,規定することができる可能性がある。特に重心動揺計による理学療法技術評価は荷重場面での介入における理学療法技術の伝達や教育,さらには技術トレーニングに有効な方法となることが期待される.
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© 2013 日本理学療法士協会
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