理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-12
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ポスター発表
注意資源の分配量が重心動揺に与える影響 dual taskを用いた検討
大澤 将真荒井 剣一鈴木 友香子浅見 早織石井 清也西村 沙紀子具志堅 敏
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キーワード: 姿勢制御, 二重課題, 注意
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抄録
【はじめに、目的】近年、臨床の現場では転倒を予防するために二重課題(dual task;以下DT)を用いたパフォーマンステストやトレーニングが注目されており、DTを用いた研究が数多く報告されている。しかしながら、DTが重心動揺に及ぼす影響については、立位姿勢制御に対して促進的に作用するという報告もあれば、それを否定する報告もあり、不明な点が残されている。この原因の1 つとして、注意資源の分配処理能力に個人差があるためと考えられる。注意資源とは、人が持っている注意の容量であり、様々な情報を同時に処理していく際には、注意が分配されると考えられている。そこで本研究では、片脚立位保持と認知課題(stroop test)を組み合わせたDTにおける重心動揺を、認知課題の難易度により注意の分配を変化させ、片脚立位保持のみ(single task;以下ST)と比較し、DTが重心動揺に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。【方法】対象は若年健常者17 名(男性9 名、女性8 名、平均年齢20.8 ± 1.0 歳)とした。ボールを蹴る側の足を利き足とし、その反対側での片脚立位時の重心動揺を計測した。課題設定としては、1 回目はST、2 回目から5 回目は片脚立位時にstroop test を組み合わせて行った。stroop testは1 つの画面に1 文字が表示されるように作成した。2 回目の計測では正解するごとに画面を切り替えていく。この時、30 秒間に何問回答出来るか計測し、その枚数を対象者の基準とした(以下、DT0)。3 回目から5 回目はこの基準の枚数に−5、+3、+8 を加えた枚数の画面が自動的に切り替わるように時間設定をした(以下順に、DT−5、DT+3、DT+8)。この切り替わる速度の変化により認知課題の難易度設定を行った。STと各DT条件下の総軌跡長の比較においては、ノンパラメトリック手法であるWilcoxonの符号付順位検定を用いて検討した。なお、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、研究内容や個人情報の取り扱いなどについて十分に説明した後、研究への参加同意を書面にて得た。【結果】STにおける総軌跡長は780.4 ± 142.5mmであった。DT0、−5、+3、+8 の総軌跡長はそれぞれ780.6 ± 144.6mm、746.4 ± 126.9mm、729.6 ± 140.2mm、766.2 ± 131.3mmであった。STとDT0、−5、+8 では有意差を認めなかったものの、DT +3 では総軌跡長が有意に減少した。有意差の認められたDT+3 に関しては、総軌跡長が増加した者もいたため、減少群と増加群に分けて検討した。減少群では、DT−5 とDT+8 においても総軌跡長が有意に減少しており、DT−3、DT−5、DT+8 の順に小さい値を示していた(p<0.05)。【考察】STとDT0 で、総軌跡長の値に有意差を認めなかった原因として、DT0 では、画面の切り替わる時間を設定せず任意の速度で答えさせたため、テンポやリズムが一定にならなかったことが影響したと考える。画面の切り替わる速度が対象者によって異なり、さらに同一の課題中も一定の速度とならず、画面の切り替わるタイミングが一定にならなかった。また個人により課題に対し過剰努力をしていた者や、余力を残していた者がいたことが考えられ、それらも一定の傾向を示さなかった原因であると考えた。STと比較してDT+3 のみ総軌跡長が有意に減少した。片岡らは、立位姿勢調節は無意識的に遂行される自動化された調節動作であり、注意資源の配分が減少することで、より無意識的になり適切な反応選択を起こすため、効率的な姿勢調節が可能になると述べている。DT+3 では、stroop testを正確に回答することに注意を向けたため、片脚立位保持に対しての注意量が減少し、無意識的になったと考える。またDT+3 は、課題の難易度が適切であり、片脚立位保持の自動化を可能としたため、適切な反応選択を起こしたことで総軌跡長が有意に減少したと考えた。有意差が認められたDT+3 に関しては、総軌跡長が増加した者もいたため、減少群と増加群に分けて検討した。減少群では、DT−5 とDT+8 においても総軌跡長が有意に減少しており、DT−3、DT−5、DT+8 の順に小さい値を示していた。このことからパフォーマンスを効率的に向上させるためには、DTの難易度を適切に設定することが大切であると考えられる。増加群では、DT−5 でも有意に増加しており、今回のDT条件ではパフォーマンスを低下させる結果となった。そのためこの群の人では、注意を適切に分配する能力が低い可能性があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究においては、DTを用いた検査実施においては、課題の難易度を適切に設定することで姿勢制御が向上することが明らかとなった。このことから、運動機能の低下している高齢者においても、DTの難易度を適切に設定することで効果的なトレーニングの実施に繋がると考えられる点で意義がある。
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© 2013 日本理学療法士協会
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