理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-12
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ポスター発表
身体重心と足圧中心の位置関係からみた高齢者のステッピング反応特性
竹内 弥彦大谷 拓哉三和 真人雄賀多 聡
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抄録
【はじめに】立位姿勢でバランスを崩した際に出現する姿勢反応のうち、支持基底面を拡大して身体の安定性を得るステッピング反応が、高齢者の転倒防止にもっとも効果的な反応と考えられる。McIlroy(1996)は高齢者のステッピング反応の特性として、ステップ着地後に1 歩では踏みとどまれずに、複数歩のステップが出現することを報告している。さらに、Maki(2001)の報告では、着地後のステップ出現が加齢や転倒リスクと関連することを明らかにしている。本研究の目的は身体重心(Center of Mass; COM)と足圧中心(Center of Pressure; COP)の位置関係を中心とした運動学的特性から、着地後にステップの出現を要する高齢者の後方ステッピング反応の特性を明らかにすることである。【方法】対象は地域在住高齢者20 名のうち、Push and Release test(Horak,2004)にて、後方へのステップ着地後に続いて、ステップの出現を認めた9 名(平均年齢67.8 ± 3.7 歳)とした。ステッピング反応時のCOMの計測には、赤外線カメラ8 台で構成される3 次元動作解析装置を用い、反射マーカを計25 ヶ所、被験者の体表に貼布し標点とした。COPの計測には床反力計4 枚を用いた。さらに、標点データと床反力データを同期させ、ステッピング反応時の下肢関節モーメントを計測した。被験者は、前後2 列に設置した床反力計の前列2 枚に左右の足部を踏み分けて立位姿勢を保持した。続いて、随意的に重心を後方へ移動し、寄りかかった検者の手掌を離すことで外乱を加え、後方へのステッピング反応を誘発した。検者が手掌を離すタイミングは、被験者の肩峰・大転子からの垂線が踵骨より後方に位置した時点とし、被験者の側方に設置した姿勢鏡で確認した。さらに検者の手背に加速度計を取り付け、外乱が加わった時期を同定した。ステッピングの着地時期を後列の床反力データから同定し、着地時におけるCOMとステップ足COPの位置データを前後・左右方向別に解析した。さらに、外乱からステップ足部が離床するまでをPerturbation-Stepping(PS)期と定義し、ステップ足が離床してから着地する直前までの時期をSingle-Stance(SS)期と定義した。PS期とSS期における支持脚の下肢関節モーメントを算出し、加えて両期の所要時間を算出した。複数歩のステップ(Multi Step; Multi)が出現した際のステッピング反応を測定後、Push and Release testを数回繰り返し、1 歩(Single Step; Single)で踏みとどまれた際のデータと比較した。統計処理は、ステップ着地時のCOMとCOPとの位置の差(距離)、PS・SS期の関節モーメントおよび所要時間について、対応のあるt検定を用いてMulti、Single間で比較した。加えて、MultiとSingle間で有意な差を認めたCOM-COP距離と所要時間を目的変数、関節モーメントを説明変数として単回帰分析を行った。【倫理的配慮、説明と同意】全ての被験者には実験の趣旨を口頭および書面を用いて説明し、署名にて同意を得た。なお、本研究は本学倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果】ステップ着地時のCOM-COP距離では、前後方向でMulti 5.6 ± 8.0cm、Single 14.9 ± 7.9cmであり、Singleで有意に高値を示した(p<0.05)。PS、SS期の時間では、SS期においてMulti 0.18 ± 0.04s、Single 0.20 ± 0.05sであり、Singleで有意に高値を示した(p<0.05)。その他のCOM-COP距離と時間、および各期における関節モーメントでは有意な差を認めなかった。また、各関節モーメントを説明変数とした単回帰分析では、有意な回帰式は得られなかった。【考察】ステップ着地時におけるCOMとステップ足COPの前後方向の距離において、Singleで有意に高値を得た。これは、後方へのステップ着地時に身体COMに対してステップ足をより後方へ着地することで、1 歩で踏みとどまれることを示唆している。後方向へのステッピング反応では、後・下方向への加速度が生じるため、ステップ側の足部、つまり床反力作用点としてのCOP がより後方へ位置することで、後・下方向に生じるCOM加速度へのカウンターとしての力が作用していたことが考えられる。さらに、SS期の所要時間にてSingleが有意に長かった。これらの結果より、後方へのステッピングが1 歩で止まれるためには、SS期の時間が長く、身体COMに対しステップ足をより後方へ位置させることが必要と考えられる。一方、関節モーメントを説明変数とした単回帰分析の結果、有意な回帰式は得られなかった。この結果からは、着地時の身体COMとステップ足COPとの位置の差やSS期の所要時間と、支持脚の関節が発揮する力との関連性は低いことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究で得られた後方へのステップ着地時における運動学的特性の知見は、理学療法士が立案する転倒防止トレーニングの内容を、より科学的根拠に基づいたものとするための基礎データとして活用可能と考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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