理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-13
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一般口述発表
「脳血管疾患患者の歩行速度変化に関わる特徴の検討」
~3次元動作解析装置を利用して(前額面編)~
田中 良明奥山 真純小島 伸枝高村 雅二
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抄録
【はじめに、目的】脳卒中片麻痺患者の歩行において,歩行速度向上への戦略は多様に存在し,また症例において異なる.そのため,最大歩行速度向上へアプローチする際に難渋するケースを経験する.よって,歩行速度が変化した際の歩容変化を計測し,特徴を運動学および運動力学的に分析し,我々は第63回北海道理学療法士学術大会にて本研究における対象10名においては,麻痺側立脚初期での股関節伸展パワーによる重心の上昇と麻痺側立脚期での重心の最高点が中期(立脚相の40%程度)に収束するという2条件が揃っていることが歩行速度上昇の要因となる可能性を報告した.今回は先行研究にて課題となっていた前額面上からの要因検討を行ったので報告する.【方法】対象は当院外来リハビリテーション通院中の慢性脳卒中片麻痺患者10名(男性10名,平均年齢57.2±9.5歳,下肢Brunnstrom stage(以下B/S)は5:8名,6:2名,平均発症経過期間64.8±46.8ヶ月,歩行形態は独歩4名,装具のみ使用6名)とした.三次元動作解析装置VICONおよび床反力計(AMTI社製)を用い,臨床歩行分析研究会推奨の18点マーカー法を利用して,快適歩行速度(「通常通り」歩くよう示指)と最大歩行速度(「できるだけ早く」歩くよう示指)を各3回計測した.データ解析後,歩行速度,歩幅,歩行率,床反力,関節角度,関節パワー,Center of gravity(以下COG),Center of pressure(以下COP)を算出した.また身体機能評価として,Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)の総得点および運動機能合計点を用いた.分析は歩行速度上昇率(最大歩行速度/通常歩行速度)の中央値を基準に,上位群(5名)と下位群(5名)に群分けし,SIASにはMann Whitney U test,基礎データには2標本t検定を用いて,それぞれ有意水準5%にて統計処理を実施し群間比較を行った.得られた運動学的データより,歩行速度向上に対する特徴を検討した.【倫理的配慮、説明と同意】全ての対象には書面にて同意を得た.【結果】麻痺側立脚相での側方床反力(第1峰のピーク値)の上昇率(最大/快適)では,上位群の全例で上昇する傾向がみられが,下位群ではばらつく結果となった.COGおよびCOPの外側移動距離では両群ともにばらつく結果となった.また,先行研究の結果では麻痺側立脚相の足関節底屈パワーおよび股関節伸展パワーでは,上位群は上昇するのに対し下位群ではばらつく結果となった.【考察】先行研究では,今回の対象10名においては歩行速度上昇の要因は麻痺側立脚相に多くみられた.片麻痺患者の歩行に関して,多数の先行研究が行われているが,前額面からの検討は十分とはいえないのが現状である.一般的に歩行速度が上昇すると,側方の重心移動は小さくなるといわれている.今回の対象10名の結果では,麻痺側立脚相での側方重心移動が小さくなるという傾向は得られなかった.しかし,側方床反力上昇率では上位群で上昇する結果が得られたことから,今回対象10名においては先行研究にて報告した2条件(麻痺側立脚初期での股関節伸展パワーによる重心の上昇と,麻痺側立脚期での重心の最高点が中期(立脚相の40%程度)に収束する)に加え,側方床反力上昇率の増加も歩行速度上昇の要因となりうる可能性が示唆された.側方床反力上昇の要因としては足関節,股関節,体幹における前額面の検討が必要と考えるが,今回使用した18点マーカー法では体幹の運動や運動力学的データなど前額面上の検討を行うには不十分であったため,今後の課題とした.また,麻痺側立脚相の足関節底屈パワーおよび股関節伸展パワー,側方床反力など上位群は上昇するのに対し下位群ではばらつく結果となったことから,今回の対象10名においては麻痺側立脚相で歩行速度上昇への戦略がパターン化されつつある傾向にあるのに対し,下位群ではより個人差が大きいことが考えた.今後,さらなる検討を行っていくことで,片麻痺患者における歩行速度上昇の戦略の多様性を矢状面および前額面別にパターン化できる可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】片麻痺患者における歩行速度向上の戦略は多様に存在し,理学療法介入においても課題が散在しているのが現状である.データを集積し,矢状面および前額面からの検討を継続していくことで,今後の治療戦略の一助となると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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