理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-14
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ポスター発表
肺移植における術前の肺活量は術後の肺活量に影響する
大島 洋平長谷川 聡玉木 彰陳 豊史板東 徹伊達 洋至柿木 良介
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抄録
【はじめに、目的】本邦では過去に生体および脳死肺移植はそれぞれ100例以上の手術が行われている。肺移植は重症呼吸不全患者の唯一の根治的治療方法であり、生命予後の改善のみならず日常生活レベルや健康関連QOLの改善を認めることが報告されている。当院では2008年に脳死肺移植を再開し、現在では年間約20例の肺移植術を施行しており、全例に対して周術期の呼吸リハビリテーション介入を行っている。肺移植患者に対する呼吸リハビリテーションプログラムは術後の回復段階に応じて適切に変化させていく必要があると考えられるが、本邦では肺移植患者の術前、術後の肺機能や運動機能についての報告そのものが少なく、肺移植患者にとって重要なリハビリテーションプログラムは何かという点について検討するための根拠となるデータすら乏しい現状にある。そこで、本研究では肺移植患者に対して根拠に基づいた呼吸ハビリテーションプログラムの作成に役立てるために、肺移植患者の術前術後の肺機能・運動機能の現状を明らかにし、術前術後の関係性について検討することを目的とした。【方法】対象は2008年8月から2012年5月までに当院にて肺移植を施行した45例のうち、年齢が15歳以上で、かつ診療内で術前と術後3ヶ月経過時に肺機能、運動機能評価を実施している29例(生体肺移植17例、脳死肺移植12例)とした。なお、29例(男性14例)の平均年齢は44.1±12.7歳、平均身長は161.7±7.8cm、術前平均BMIは18.1±3.0であった。全対象者の基礎情報、肺機能(肺活量、1秒量、1秒率)、運動機能(6分間歩行距離)は当院電子カルテを後方視的に調査してデータ収集を行った。なお、BMI、肺機能、運動機能については術前と術後3ヶ月のデータを調査した。検討事項は、術前と術後3ヶ月でのBMI、肺機能、運動機能を対応のあるt検定を用いて平均値の比較を行い、さらにpearsonの相関係数を用いて術前と術後3ヶ月の関係性を検討した。なお、各検定は有意水準5%未満を統計学的に有意と判定した。【倫理的配慮、説明と同意】すべての対象者には事前に診療データを研究目的で使用する同意を得ていた。また、すべてのデータは過去の一般診療内から採取し、得られたデータについては匿名化を行い厳重に保管した。【結果】BMIは術前18.1±3.0、術後3が月17.4±2.8であり有意に減少した。また、術前と術後3ヶ月での相関係数は0.82であり、有意な負の相関を認めた。肺活量は術前1.80±0.89L、術後3ヶ月2.09±0.76Lであり有意に増加した。また、術前と術後3ヶ月での相関係数は0.81であり、有意な正の相関を認めた。1秒量は術前0.86±0.41L、術後3ヶ月1.68±0.64Lであり有意に増加した。また、術前と術後3ヶ月での相関係数は0.21であり有意な相関は認めなかった。1秒率は術前59.9±30.0%、術後3ヶ月82.4±15.2%であり有意に増加した。また、術前と術後3ヶ月での相関係数は0.52であり、有意な正の相関を認めた。6分間歩行距離は術前246±111m、術後3ヶ月471±122mであり有意に増加した。また、術前と術後3ヶ月での相関係数は0.61であり、有意な正の相関を認めた。【考察】対象者の肺機能・運動機能は肺移植により著しい改善を認めた。肺機能の中でも、1秒量は術前後での改善にばらつきがあり術前と術後3ヶ月での値の関係性は低かった。しかしながら、肺活量に関しては健常な肺を移植するにも関わらず術後肺活量は術前との関係が強いことが明らかとなった。一般的に脳死肺移植ではドナー肺はレシピエントの肺活量予測値におおむね見合った大きさが選択されるが、生体肺移植ではドナー肺はレシピエントの肺活量予測値よりも小さいことが多い。本研究ではドナー肺の大きさの違いによる影響を考慮していないにもかかわらず、対象者の術後肺活量は術前と強い関係性があることが明らかとなった。このことは、術後の肺活量には術前からの胸郭の硬さや呼吸筋力が大きく関与している可能性があることを示唆していると考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は肺移植患者に対するリハビリテーションにおいて、術前からの胸郭の可動域運動や呼吸筋力トレーニングが術後の肺活量の改善に寄与する可能性を示唆しているという点で、重要な意義があると考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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