日本口蓋裂学会雑誌
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原著
思春期における口唇裂・口蓋裂患者の疾患や治療への認知の特徴
松中 枝理子藤原 千惠子池 美保高野 幸子西尾 善子古郷 幹彦
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2016 年 41 巻 3 号 p. 181-191

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抄録
【緒言】近年,子どもの視点から疾患や治療を受けながら日常生活を営むことを理解する必要性が重視されるようになってきた。これらの理解は,子どもの疾患の中でも発生頻度が高く,可視的変形を伴い,長期的な治療を要する口唇裂・口蓋裂(以下,CLPとする)を持つ子どもに関しても重要であると考えられる。特に思春期では口唇または外鼻修正術が行われ,患者の自己概念が脅かされる可能性がある。
【目的】本研究ではCLP患者への支援の示唆を得るために,思春期のCLP患者の疾患や治療への認知の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】14~18歳のCLP患者9名を対象に行った半構造化面接に対し,疾患と治療への認知に焦点を当てて質的帰納的分析を行った。
【結果】思春期の患者は【CLPや治療は自分の事だと思えない】,【治療を受けることは避けられない】,【治療に伴う制限や変化への適応に迫られる】という否定的認知と【CLPを持つ自分が自分だと思う】,【自分のために治療を受けようと思う】,【CLPをきちんと理解したい】,【治療を言い訳に使う】という肯定的認知を持ち合わせていた。
【考察】思春期の患者は他者からの自分自身への評価に影響されながら疾患や治療への認知を形成しており,CLPを持って生まれてきたことへの意義を見出す過程にあることが考えられた。また,思春期の患者の中には,術前の自分の顔貌に自分らしさを感じているが,親や医師に勧められるために手術を受ける患者が存在した。さらに,生活や医療への意思決定の主体が患者に移行されにくい原因として,否定的認知の存在が示唆された。医療従事者は,本研究で示唆された否定的認知の内容を考慮しながら,患者が生活や医療への意思決定を行えるよう支援することが必要だと考えられる。
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© 2016 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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