2016 年 56 巻 10 号 p. 702-704
症例は64歳女性.後頭部痛と左耳痛,咽頭痛後に,左の第IX,X,XI,XII脳神経障害を呈した.髄液検査で細胞数増多と蛋白上昇,水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus; VZV)-DNAを認めVZVによる多発下位脳神経障害と診断し,抗ウイルス薬とステロイド薬の併用療法により症状は速やかに改善した.経過を通じて皮疹・粘膜疹は認めずzoster sine herpeteと考えられた.耳痛・咽頭痛を伴う急性発症の下位脳神経障害では,第VII,VIII脳神経障害や皮疹・粘膜疹が存在しなくてもVZV感染症を考慮する必要がある.