社会の高齢化・情報化に伴い,高齢者にも使いやすいIT機器開発は危急の課題である.しかし,とりわけ高齢者による機器使用の学習過程とその要因については未だ明らかではない.本研究は一般に「新奇機器の学習は周囲の他者からの支援が重要であり,社会的環境が機器使用に影響する」との仮説に立ち,高齢者の携帯電話使用を検討した.まず高齢者297名を対象とした質問紙調査から配偶者とのみ同居する世帯での携帯電話使用度は低く,同居者の多い世帯での使用度は高い「家族構成の効果」を見出し,しかし同居者数に関わらず独居者は最も使用度が高いことを示した.次に新規ユーザを対象とした3週間長期ユーザビリティテストにおいて家族構成の異なる群を比較した処,主観的使用度・使用記録・テスト課題成績等各指標から,配偶者のみの世帯よりも孫同居世帯・独居世帯の方が学習達成が高いことを示した.学習要因としての社会的支援について考察する.