抄録
同一楽曲の演奏であっても,演奏者が意図する表現が異なると,演奏音に対する印象が異なるということは,我々が日常的に経験することである.本研究では,そのような演奏における表現の違いが聴取者の印象評定に与える影響を定量的に検討した.聴取刺激として,プロのピアニストに,2つの楽曲(ラフマニノフ作曲「音の絵Op.39-1」,同作曲「前奏曲Op.32-5」)を3通りの表現タイプ(<機械的な>,<芸術的な>,<誇張的な>)で演奏させ,それを録音したものを用いた.実験参加者には,作成された6刺激(2(曲)×3(表現タイプ))を聴取させ,そのそれぞれについて31の感情語を用いた印象評定を求めた.結果,聴取者は演奏者の意図した表現タイプを区別することができ,また,表現タイプによって印象の程度も異なることが示された.