抄録
本研究では,人の視野範囲における刺激の呈示位置の違いによって,表情からの感情認識において動的情報が及ぼす影響が異なるかを検討することを目的とした。表情刺激は,次元的観点に基づいて作成した表情から快表情3種類(いきいきした,うれしい,のんびりした),不快表情3種類(恐ろしい,怒った,悲しい)を抜粋した。課題は,中心視野,左右周辺視野のいずれかの位置に呈示されるターゲット表情(動画,静止画)の感情状態を評定するものであり,第1実験では,強制選択法,第2実験では,Affect Grid (Russell, Weiss, & Mendelsohn, 1989) を用いた。結果は,強制選択法による評定では,周辺視野に呈示された怒った表情のみ,動画のほうが静止画の正答率よりも有意に高かった。Affect Gridによる評定では,周辺視野に呈示された快表情のみ,動画のほうが静止画よりも有意に快が強く評定された。