抄録
ベイズ型推論課題では,問われている条件付確率P(B|A)を連言確率P(A&B)と混同する連言確率解が頑強に出現する。本研究では「ガン検診確率ランクづけ課題」という有意味文脈課題を集団形式で大学生に出題し,確率が大きいと思われる順にP(陽性|ガン),P(ガン&陽性),P(ガン|陽性)に番号をつけさせた。正判断者(P(陽性|ガン)>P(ガン|陽性)>P(ガン&陽性))は25%で,38%がP(陽性|ガン)とP(ガン&陽性)を同一順位とみなし認知的浮動(中垣, 2006)(条件付確率と連言確率の解釈上の混同)を起こしていた。本結果は「ベイズ型くじびき課題」で約4割の大学生が連言確率解で解答していたこと(伊藤, 2008)と整合的であるように思われる。本稿の課題は必ずしもベイズ型推論課題のように確率量化を要求する課題ではなかったが,解釈のレベルで既に条件付確率と連言確率を同一視している可能性が示された。