抄録
本研究では、ネガティブな記憶を肯定的な側面から語り直す効果が、思考統制能力の高低によってどのような変化を生むのかを検証した。33名の参加者は、思考統制能力(TCAQ)および自伝的記憶特性(MCQ)を測定する質問紙に回答したのち、参加者自身が過去に体験したネガティブな体験を語るよう求められた(セッション1)。その後、参加者は単純反復再生群、転換的語り直し群、語りなし群の3群に分けられた。反復再生群の参加者は、1日おきに2回出来事を正確に再生し、転換的語り直し群の参加者は出来事をポジティブなかたちで語り直した(セッション2・3)。セッション1から1週間後、参加者はセッション1で語った出来事とできるだけ同じ内容となるように記憶を再生した(セッション4)。その後、TCAQおよびMCQを再度評定するよう求められた。実験の結果、思考統制能力の低さはネガティブ体験の非日常性を増加させることが確認された。