抄録
本研究では,未知顔の再認記憶における表情の影響が性別および呈示時間によって異なるかを検討した。学習段階では,怒り顔および笑顔の顔写真が短時間(800ms)もしくは長時間(2000ms)呈示された。テスト段階では,ターゲットおよびディストラクタが真顔で呈示され,参加者は学習時に見た人物か判断を行った。分散分析の結果,写真の性別,参加者の性別,表情および呈示時間の間に三次の交互作用が見られたため,表情ごとに分析を行った。その結果,笑顔に対する再認成績は,女性写真の方が男性写真よりも高く,また長時間呈示の方が短時間呈示よりも高かった。一方,怒り顔では参加者の性別によって効果が異なり,男性参加者でのみ写真の性別と呈示時間の交互作用が見られた。下位分析の結果,女性写真で長時間呈示の方が短時間呈示よりも再認成績が高かった。以上の結果より,性別および呈示時間によって表情の符号化のされ方が異なることが示された。