抄録
本研究では,多様な流域からなる北海道の渇水比流量を説明する領域モデルを構築し,現在および将来の渇水比流量分布を推定する.代表115流域の渇水比流量を再現する線形回帰モデルを,降水量,気温,地形,地質,植生,土壌,土地利用の44説明因子を用いた部分最小二乗法により決定する.その際,冬の降水中の雪・雨割合は月平均気温による指数近似式を用いて推定する.その結果,冬の降雨量と降雪量,秋の降水量,冬と夏の平均気温,標高の標準偏差と平均勾配および,集水域中の火山噴出物,第四紀火山岩,森林,湿原の面積割合の11因子からなるモデルを推定誤差と因子数の点から最良と判断する.領域モデルを北海道全1122流域に適用し,非観測流域を含む渇水比流量の現在分布を推定するとともに,気候変動シミュレーション結果と併せて将来分布を予測する