抄録
Chun & Potter (1995)は英語母語者では標的と妨害刺激の音韻的親近性の差が小さいほど識別性が低く注意の瞬きが生じやすいことを見いだした。しかし水野・松井 (2010)は日本語母語者が文字処理において音韻コードよりむしろ形態コードに依存するという知見(水野・松井・Bellezza, 2007)をもとに,日本語母語者では標的と妨害刺激の形態的親近性の差が識別性を左右し注意の瞬きに影響するとする仮説を立て,妨害刺激を操作した実験でその支持的証拠を得た。本研究では,音韻コードが英語母語者の注意の瞬きには影響するが日本語母語者には影響しないことを別の角度から検証するために,両母語者の注意の瞬きへの構音抑制の影響を検討した。その結果,日本語母語者では構音抑制の有無で注意の瞬きに違いが生じないが英語母語者では違いが生じることが見いだされ,上の仮説はさらなる支持的証拠を得た。