抄録
全身の移動にともなう単一物体の空間位置の脳内表象が頭頂葉において実現されていることが指摘されている.この脳内表象は身体運動にともなう運動指令信号により頭頂葉でのegocentricな物体位置表象が更新されることで実現されると考えられている.一方,複数物体の空間位置情報の記憶は海馬において実現されていることが知られており,身体移動後の視点不変的表現についても海馬が重要であることが海馬損傷患者を対象とした研究により指摘されている.つまり身体移動後の物-場所連合記憶を想起するためには,海馬において物-場所連合のallocentricな表象が形成される必要がある.そこで,身体運動にともなう頭頂葉でのegocentricな物体位置表象の更新が海馬での複数物体位置のallocentricな表象を形成する脳内機構であると考え,身体運動をともなう物-場所記憶課題遂行中の機能的MRI計測を実施した.