2024 年 16 巻 p. 217-228
本研究は,野球選手と陸上短距離選手のトレッドミル上での走動作の比較を通して,野球選手の走動作におけるステップ変数,体幹および骨盤挙動の特徴について示すことを目的とした.大学野球選手10 名および陸上短距離選手10 名を対象に,トレッドミル上を速度8.0 m/s で走行した際の身体重心高,ステップ変数および体幹部のキネマティクス変数を比較した.その結果,野球群は陸上短距離群と比して遊脚期中の身体重心高が有意に低く,ステップ頻度が有意に高いという特徴が見られ,これらは走動作時における加減速や方向転換を有利に行うための野球選手の特徴であることを示すものとなった.一方,野球群に見られた接地時間が有意に長く,接地時の体幹捻転角度および立脚期中の体幹捻転量が有意に大きいという特徴は,陸上短距離群と比して高い疾走速度を獲得しにくい可能性を示唆するものであり,疾走速度を高めるためのトレーニング法の開発に繋がる知見となった