抄録
注意欠陥多動性障害(ADHD)は成人になってもその特性が持続することが指摘されてきている。ADHDの特徴として抑制の不全(衝動性、注意の転導、思いつきや連想などによって目的的な行動が阻害されるなど)がしばしば観察される。ところで、既学習項目の検索によってそれらが属するカテゴリーの他の項目の記憶成績が低下する検索誘導性忘却(RIF)の現象は、検索によって関連する語の想起が抑制されるために生じるという仮説がある。ADHDにおいての結果は一貫していないが青年期の実験参加者においてADHD群のRIFが生起しにくいという報告がある。本研究では、ADHD様の自覚症状を訴える中年期の成人20名についてRIF現象の生起の有無を検討した。その結果、ADHD自覚群と健常群の両群においてRIFが生起し、ADHD様の自覚症状だけでは、RIFの生起の有無に影響しない可能性が示された。