抄録
自己に関連する情報は自己と無関連な情報よりも符号化されやすく検索されやすいことが知られている.これは,自己関連情報が忘却されにくいことを暗示している.しかしながら,記憶抑制研究では意図的な抑制コントロールによって特定の記憶を忘れることは可能と示されている.本研究では,Think/No-Think (TNT) パラダイム (Anderson & Green, 2001) を用いて,思い出されやすい自己関連情報を意図的に抑制できるのかについて検討した.参加者は自己関連づけ群/他者関連づけ群に割り当てられ,手がかり-ターゲット(i.e., 単語-写真)のペアの学習を求められた.Think/No-Think フェーズ後,最終記憶成績をテストされた.その結果,自己群・他者群の両群において,No-Think 項目の再生がベースラインより低下した.これは,意図的な抑制コントロールが自己関連情報にも働くことが示唆された.