抄録
3.11.東日本大震災後の原子力発電所事故に伴う,いわゆる風評被害の要因の一つが恐怖の「般化」であることを示し,風評被害が日本の地域間の信頼感という社会関係資本の喪失に一部影響を与えている調査結果について報告する.①震災による被害が著しかった被災三県(岩手・宮城・福島),②隣県二県(茨城・栃木),③相対的に距離のある地方(東京・神奈川)の成人について質問紙調査を行った.その結果,安全だとされた農水産畜産品等に対する回避には,①産物カテゴリー内般化,②産物カテゴリー間般化,③空間的般化がみられ,回避傾向は未成年の子がいるほど著しかった.震災後の日本で地方間の相互信頼の変化についての認識は,被災地方が具体的経験に基づいてどちらかといえば弱まったと受け取る傾向があるのに対して,遠隔地ではボランティア活動に関する報道等の間接経験に基づいてどちらかといえば強まったと楽観的に認識する乖離がみられた.