抄録
本研究は、振り込め詐欺に対する高齢者の脆弱性に関して、それが連続量であるのか、それとも離散量であるために高脆弱群と低脆弱群の2群に分類されるのかについてtaxometric分析によって検討を加えることを目的とする。健常高齢者332名と対照群として大学生246名を対象に、振り込め詐欺に対する脆弱性の調査を行った。独立行政法人国民生活センターのホームページに掲載されている「高齢者に多い相談」の中からシナリオを作成し脆弱性尺度を構成した。脆弱性尺度得点と年齢をindicatorとして、MAMBACとMAXLOPEの2つのtaxometric分析を行った結果、振り込め詐欺に対する脆弱性は若年者では連続量であるのに対して、高齢者では離散量であり高脆弱群と低脆弱群の2群に分類されることが明らかになった。したがって、振り込め詐欺対策は、高脆弱群に属する高齢者を主な対象に行うべきであることが示唆される。