抄録
本研究では,「AはBのようだ」形式の比喩文の理解において,主題Aのみに含まれる意味が,喩辞B,直喩全体において,どのように処理されるかについて基礎的なデータを収集し,主題のみに含まれる意味が,比喩文の理解全体においてどのように処理さるかの示唆を得ることを目的とした調査を行った。調査では,比喩の主題,喩辞を主語とした比喩限定意味を記述した日本語の文,および「AはBのように……」に続く形で比喩限定意味を記述した日本語の文を対象に日本語の自然さ評定を行った。調査の結果,主題のみに含まれる意味は,比喩文の理解において利用されていないことが確認された。また比喩文の理解においては,主に喩辞との相互関係が重要となることが示された。