抄録
本研究では,眼球運動測定装置を用いて,展望的事象に対する人の肯定的期待により,瞳孔径が変化するかどうかを検討した。参加者に本実験プログラムが予め決定した2桁数字を予測,入力させ,正解・不正解を待機させた。両者の数字は桁ごとに正誤の照合を行い,各照合が開始する合図として数字のカウントダウンを呈示した。期待喚起の条件として,十桁側数字を照合する際のカウントダウン呈示中の瞳孔径を期待低条件とした。また、十桁側数字が不一致の場合の一桁側数字を照合する際のカウントダウン呈示中の瞳孔径を期待なし条件とした。さらに十桁側数字が一致の場合の一桁側数字を照合する際のカウントダウン呈示中の瞳孔径を期待高条件とした。その結果,瞳孔径平均値は,期待あり条件が,期待なし条件よりも大きくなった。しかし,統計的有意差はみられなかった。瞳孔径が期待度を測定し得る生理的指標となる有用性について考察する。